取適法と契約書|業務委託契約のポイントと条文例を解説します

2026年1月に「取適法(中小受託取引適正化法)」が施行されました。取適法は、これまでの「下請法」を改正したもので、事業者間の取引の適正化を図るための法律です。
近年、製造、システム開発、Web制作、デザイン、運送、各種サービスなど、事業者が他の事業者へ業務を委託する取引はますます多様化しています。その一方で、
- 支払期日を過ぎても代金が支払われない
- 原材料費や人件費が上昇しているにもかかわらず十分な協議を行わずに従来の単価を据え置かれた
- 依頼元の事業規模は大きいものの、資本金が少額であるため下請法の規制が適用されない
といった取引上の問題や、従来の下請法では十分に対応できない課題が指摘されてきました。
取適法は、従来の下請法を改正し、その規制をさらに拡充することで、受託事業者者の保護を強化し、より公正で実効性のある取引を確保するための法律です。
本稿では契約書の作成に焦点を当て、実務で活用できる契約条文例を豊富に取り上げながら、取適法の概要と実務上の注意点をわかりやすく解説します。内容は主として、取適法の遵守が求められる発注者の視点で整理していますが、受注者にとっても役立つ内容になっています。
1.取適法とは
「取適法」とは、正式名称を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といい、「中小受託取引適正化法」と略称されます。もともとは「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」として知られていた法律ですが、2026年(令和8年)の改正により規制内容が大幅に拡充され、それに伴って法律の名称や用語も見直されました。
拡充された規制内容としては、従来の資本金基準に加えた従業員数基準の新設、特定運送委託の対象追加、手形による支払の禁止、価格協議に応じない一方的な代金決定の禁止などが挙げられます。
取適法は、独占禁止法を補完する法律として、取引上の立場が弱くなりやすい受託事業者の利益を保護し、取引の適正化を図ることを目的としています。
2.取適法の対象
取適法の対象となるのは、委託者が受託者に一定の業務を委託する取引です。ただし、すべての委託取引が適用されるわけではありません。適用の有無は、①委託業務の種類と、②資本金基準又は従業員数基準の組み合わせによって判断されます。
(1)委託業務の類型

取適法の対象となる委託業務には、5つの類型があります。ここで「委託」とは、規格、品質、性能等を指定して指定して業務を依頼することをいいます。指定のない規格品や標準品の取引は、原則として委託には含まれません。
① 製造委託
顧客から受注したり顧客に販売する商品や、自社で使用する備品等の製造を依頼すること。
② 修理委託
請け負った修理業務や、自社で使用する物品の修理を依頼すること。
③ 情報成果物作成委託
顧客から受注したり顧客に提供するプログラム、映像コンテンツ、デザイン、原稿などの作成を依頼すること。
④ 役務提供委託
顧客から受注した運送、ビルメンテナンス、情報処理などのサービス提供を依頼すること。なお、社内の清掃業務のように、自ら利用するサービスの外注は取適法の対象に含まれません。また、建設業法で規制される建設工事も除かれます。
⑤ 特定運送委託(改正による追加)
販売・製造・修理した物品や、情報成果物が記載された物品を、その取引の相手方(顧客など)に運送する業務を委託すること。
(2)資本金・従業員数

取適法では、業務を委託する側を「委託事業者」、その委託された業務を受託して実施する側を「中小受託事業者」と定義しています。
以下では、委託業務の種類ごとに、取適法の対象となる事業者に該当するかどうかを一覧表として整理します。
取適法の対象一覧表
| 委託業務の種類 (取引の内容) | 区分 | 委託事業者 (委託側) | 中小受託事業者 (受託側) |
|---|---|---|---|
| ・物品の製造委託 ・修理委託 ・情報成果物作成委託 (プログラムに限る) ・役務提供委託 (運送、倉庫保管、情報処理に限る) ・特定運送委託 | 資本金基準 | 3億円超の法人 | 3億円以下の法人(個人事業主を含む) |
| 1,000万円超 3億円以下の法人 | 1,000万円以下の法人(個人事業主を含む) | ||
| 従業員基準 | 300人超の法人 | 300人以下の法人(個人事業主を含む) | |
| ・情報成果物作成委託 (上記以外:デザイン、コンテンツ制作等) ・役務提供委託 (上記以外:ビルメンテナンス、 コールセンター等) | 資本金基準 | 5,000万円超の法人 | 5,000万円以下の法人(個人事業主を含む) |
| 1,000万円超 5,000万円以下の法人 | 1,000万円以下の法人(個人事業主を含む) | ||
| 従業員基準 | 100人超の法人 | 100人以下の法人(個人事業主を含む) |
判定にあたってのルールは次のとおりです。
① 優先順位
まず「資本金基準」で判定し、資本金基準で対象にならない場合にのみ「従業員基準」を適用します。
② 個人事業主の扱い
委託事業者となるのは法人たる事業者に限られます。一方、中小受託事業者には、法人だけでなく個人事業主も含まれます。個人事業主についても、常時使用する従業員の数が法定の基準以下であれば、中小受託事業者に該当します。
③ 従業員
「従業員」とは、事業者が常時使用する従業員を指します。正社員だけでなく、パート・アルバイトや、1か月を超えて継続して雇用される日雇労働者も含まれます。
④ 判定時期
委託事業者と中小受託事業者の該当性は、製造委託等をした時点(発注時点)における事業者の規模を基準として判断されます。
3.取適法と下請法の違い

取適法により新たに定められたポイントについて整理しておきます。
① 従業員基準の追加
下請法では、事業者の規模については「資本金の額」を基準として、適用対象となるかどうかが判断されていました。これに対し、取適法では、新たに「従業員の数」による基準が追加されました。
② 特定運送委託の追加
下請法では、運送のルールは主に「運送会社が別の運送会社へ仕事を回す(再委託)」ケースが中心でした。取適法ではこれに加え、メーカーや販売業者(荷主)が運送業者に対して直接「商品の運送」などを依頼する取引も規制対象(特定運送委託)となりました。ネット通販事業者が購入者への配送を運送会社に委託する場合や、修理業者が修理済みの商品を顧客へ返送するために運送会社へ配送を依頼する場合などが該当します。
③ 製造委託取引の対象拡大
下請法では、物品そのものや、その製造に使用する金型の製造委託が対象とされていましたが、取適法では、これらに加え、製品の製造に使用する木型(きがた)や治具(じぐ)などの製造委託についても、対象となることが明確化されました。
④ 協議応じない一方的な代金決定の禁止
取適法では、中小受託事業者から代金の額について協議を求められたにもかかわらず、委託事業者が協議に応じない、または必要な説明や情報の提供をしないまま、一方的に代金の額を決定することが禁止されています。
⑤ 手形払いの禁止
下請法では、一定の条件の下で手形による支払が認められていましたが、取適法では、手形による支払が禁止されています。また、電子記録債権や一括決済方式など、手形以外の支払方法についても、支払期日までに代金の満額に相当する金銭を受け取ることが困難なものは認められません。
⑥ 代金減額の遅延利息支払義務
下請法では、代金の支払が遅れた場合に限り、遅延利息の支払義務がありました。これに対し、取適法では、委託代金を不当に減額した場合についても、その減額分に対して年14.6%の遅延利息を支払う義務が新たに設けられました。
⑦ 代金振込手数料の負担義務
下請法では、事前の合意があり、実費の範囲内であれば振込手数料を中小受託事業者に負担させることが認められていました。これに対し、取適法では、合意の有無にかかわらず、振込手数料を代金から差し引くことは「代金の減額」に当たり、禁止されています。
4.契約書に記載すべき事項
(1)取適法で求められる明示事項
取適法4条は、委託事業者に対し、発注した場合には直ちに取引条件を明示すること(以下、「4条明示」といいます。)を義務付けています。これは、口頭による発注などによって取引条件が不明確になることを防ぎ、中小受託事業者の利益を保護するためです。具体的な明示事項は、以下のとおりです。
① 委託事業者と中小受託事業者の名称
誰が誰に仕事を委託したのかが分かるよう、委託事業者と中小受託事業者の名称を明示します。
② 発注日
業務を実際に発注した日を明示します。個別契約書(発注書等)を送付して発注する場合には、その送付日を発注日として記載します。口頭で発注した場合には、実際に発注した日を明示します。
③ 給付の内容
何を作るのか、どのようなサービスを提供するのかを具体的に明示します。物品であれば品名、数量、仕様など、情報成果物や役務であれば、その内容や範囲などを具体的に明示します。
④ 受領日
物品の製造・修理等を委託する場合は、委託者がその物品を受け取る日、情報成果物の作成や役務の提供を委託する場合は、委託者が情報成果物や役務の提供を受ける日(期間)を明示します。
⑤ 受領場所
物品を納入する場合に、その物品を受け取る場所を明示します。情報成果物をオンラインで納入する場合には、「指定のメールアドレス」や「指定のサーバー」など、納入方法・場所を具体的に定めます。
⑥ 検査の完了日
給付の内容について検査を行う場合に、その検査を完了する日を記載します。検査を行わない場合は、明示する必要はありません。
⑦ 代金の額
給付に対して支払うべき代金の額です。正確な金額を注文時に定めることが「やむを得ない事情」により難しい場合は、「1時間あたり○円×実作業時間」のように、後から代金の額を具体的に算定できる方法を明示します。なお、委託事業者が価格協議の申出に応じず、一方的に代金を決定する運用は、取適法に違反するおそれがあります。そのため、代金の決定方法は、双方が協議できるものとしておくことが重要です。
⑧ 代金の支払期日
「○年○月○日」のように、具体的な日を特定して定めます。「納品から○日以内」など、具体的な支払日を特定できない定め方は認められません。支払期日は、給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に定める必要があります。検査を行う場合でも、原則として検査完了日や検収日ではなく、給付を受領した日を基準として支払期日を定めます。
⑨ 一括決済方式による支払に関する事項
代金の全部または一部を一括決済方式で支払う場合には、利用する金融機関名、一括決済方式で支払う金額(または支払総額に占める一括決済方式による支払額の割合)、一括決済方式を利用できる期間の開始日、そして委託事業者が金融機関に代金相当額を支払う決済日を明示する必要があります。
⑩ 電子記録債権による支払に関する事項
代金の全部または一部を電子記録債権で支払う場合には、電子記録債権の額、支払期日など、必要な事項を明示します。
⑪ 有償支給する材料に関する事項
委託事業者が材料を中小受託事業者に有償で支給する場合には、その材料の品名、数量、対価、引渡し日、対価の支払期日・支払方法などの必要な事項を明示します。
⑫ 注文時に決定できない事項
①~⑪の事項のうち、やむを得ない事情により注文時に内容を定めることができない事項がある場合には、その事項を定めることができない理由と、その事項を定めることができることとなる予定期日を明示します。なお、後日その事項を定めることができるようになった場合には、直ちにその事項を明示する必要があります。
(2)取適法と契約書
取適法4条の明示を行うための定まった書式はありません。単発での発注では、必要な内容を記載した注文書(依頼書・発注書)を使用することが一般的です。これらの参考書式は、公正取引委員会・中小企業庁が発行している中小受託取引適正化法テキストに載っています。

出典:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」
URL:https://www.jftc.go.jp/toriteki/r7text.pdf
一方で、同種の業務委託を複数回行う場合は、あらかじめ共通する条件を明示しておけば、個々の委託ごとにすべての条件を繰り返し明示する必要はありません。そのため、共通事項を「基本契約書」で定め、個々の委託内容や報酬等は「個別契約書(注文書等)」で定めることが一般的です。
(3)基本契約書に記載する事項

継続的な取引を行う場合には、すべての取引に共通して適用される事項を、あらかじめ「基本契約書」で定めておくことができます。基本契約書で定める共通事項としては、例えば次のような条項が挙げられます。
- 代金の支払手段
- 代金の支払期日(月単位の締切制度など、各取引に共通するルールを採用する場合)
- 検査の完了日
- 原材料の支給に関する条件
既に締結済の基本契約書を取適法に対応させるには、新たな契約書を締結する方法と、既存の契約書の修正覚書を締結する方法があります。
修正覚書についてはこちらの記事を参考にしてください。
契約書の修正・訂正方法|訂正印の使い方や修正契約書の書き方を解説
(4)個別契約書(注文書等)に記載する事項

個別の取引ごとに定める条件は、その都度個別契約書で明示する必要があります。たとえば、下記の事項が対象になります。
- 発注日
- 給付の内容
- 受領日
- 受領場所
- 代金の額
(5)基本契約書と個別契約書を作成する場合の注意点
取適法の対象となる取引では、基本契約書を締結している場合であっても、発注時に明示すべき取引条件が不足しないよう注意が必要です。そのため、個別契約に次のような条項を設け、個別契約書に基本契約書の条件が適用されることを明記します。
例:基本契約の適用
本個別契約(注文書等)に定めのない事項については、○年○月○日付で委託者及び受託者間で締結した○○基本契約書の定めによるものとする。
また、両者の内容に矛盾や相違が生じた場合に、どちらの定めを優先するかを明確にしておく必要があります。一般的には基本契約書に次のような条項を設けます。
例:契約の優先順位(個別契約を優先させる場合)
本基本契約と個別契約の定めに矛盾又は相違がある場合には、個別契約の定めが本基本契約に優先して適用されるものとする。
5.フリーランス法

(1)取適法とフリーランス法
取適法とよく似た法律に「フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」があります。両者の主な違いは以下のとおりです。
| 取適法 | フリーランス法 | |
|---|---|---|
| 規制対象 (委託側) | 資本金や従業員数が一定値を超える法人 | 原則として全事業者(個人同士の依頼も含む) |
| 保護対象 (受託側) | 資本金や従業員数が一定値以下の法人や個人事業主 | 従業員を使用しない個人事業主や一人会社 |
| 法律の目的 | 取引の適正化が主眼 | 取引の適正化に加え、就業環境の整備(育児介護配慮、ハラスメント対策等)も含む |
| 役務提供の範囲 | 他者に提供するサービス(再委託)が中心 | 委託事業者が自ら用いるサービス(社内清掃など)も含む |
(2)取適法とフリーランス法で共通する主なルール
取適法とフリーランス法では、適用対象となる事業者や取引、規制内容に違いがありますが、共通するルールも数多く設けられています。契約書を作成する際に特に重要な共通点としては、次のようなものがあります。
- 取引条件の明示義務
発注時には、委託内容、報酬・代金の額、支払期日などの取引条件を、書面または電磁的方法により明示する必要があります。 - 報酬の支払期日
報酬は、原則として、受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に支払う必要があります(フリーランス法では、一定の要件を満たす再委託について例外があります)。 - 禁止行為
受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたきなど、委託者がその立場を利用して受託者に不利益を与える行為については、両法に共通する禁止行為として規制されています。
(3)取適法とフリーランス法を踏まえた実務対応
① 基本的な考え方
フリーランス法には、取適法のような資本金額・従業員数による段階的な適用基準はなく、受託者が従業員を使用しているか否かなどによって適用の可否が判断されます。そのため、「従業員を使用していない個人事業主」や「役員が一人で、かつ従業員を使用していない法人(いわゆる一人会社)」に業務を委託する場合には、委託者の規模にかかわらず、原則としてフリーランス法の適用対象となります。ただし、発注者側の従業員の使用状況などによって、適用される範囲は異なります。
取適法とフリーランス法は、適用対象や規制内容が異なるものの、一つの取引に両方の法律が適用される場合があります(重畳適用)。この場合、それぞれの法律が定める要件や義務を満たす必要があります。
そもそも、取引ごとに両法の適用関係を判断し、その結果に応じて異なる契約書や運用ルールを使い分けることは、実務上、複雑な対応となります。そのため、両法の適用可能性を踏まえ、いずれの法律にも適合するよう契約書や社内の運用ルールを整備し、できる限り統一しておくことが実務上望ましいといえます。
② 取引条件の明示事項
取適法とフリーランス法の明示事項には、多くの共通点があります。当事者の名称、委託日、業務内容、納期・役務提供日、受領・提供場所、代金・報酬の額、支払期日、検査完了期日(検査を行う場合)などは、いずれの法律でも明示が必要です。
一方、両法にはそれぞれ固有の明示事項もあります。たとえば、取適法では、原材料等を委託者から購入させる場合の品名・数量・対価・引渡期日・決済期日等について明示が必要となる場合があります。また、一括決済方式や電子記録債権などを利用して代金を支払う場合には、支払方法に応じた事項の明示が必要です。
フリーランス法では、手形、電子記録債権、資金移動業者の口座への資金移動など、金銭以外の方法で報酬を支払う場合に、支払方法に応じた事項の明示が必要です。たとえば、PayPayなどの資金移動業者を利用する場合には、資金移動業者の名称及び支払額を明示します。
このように、両法が重畳適用される場合には、それぞれの法律で明示事項が異なる点に注意が必要です。ただし、契約書等に、それぞれの法律で求められる明示事項を満たすように記載することで、両法の明示義務に対応することができます。
フリーランス法については、次の記事をご参照ください。
フリーランス法と契約書|業務委託契約のポイントと条文例を解説します
6.契約書作成のポイント
取適法では、委託事業者は、中小受託事業者に業務を委託する際、所定の取引条件(4条明示の内容)を、書面または電磁的方法により明示する義務があります。また、支払遅延利息や知的財産権の帰属など、取適法を遵守し、委託者と受託者との間のトラブルを防止するために、契約書であらかじめ条件を明確にしておくことが望ましい事項もあります。
以下では、業務委託契約を作成する際に、取適法への適合を確保するために定めておくべき事項や、トラブル防止のために契約書に記載しておくことが望ましい事項について、具体的な条文例を交えて解説します。
なお、フリーランス法における注意点についても触れていますので、両法の規制に対応した契約条文を作成することができます。
(1)給付内容(成果物・役務)
給付内容については、成果物や役務(サービス)の内容を具体的に記載するようにします。
「〇〇一式」などのような漠然とした取り決めですと、トラブルのもとになります。そのため、成果物については、品目、品種、数量、規格、仕様などを明確にします。役務についても同様に、作業範囲、作業手順、提供時間・期間、成果の水準(品質基準)、使用するツール・方法、報告の頻度や形式などを具体的に定めておくことが重要です。また、修正対応が可能な回数や追加作業の扱いを明確にしておくことで、後のトラブル防止につながります。
(2)納品場所・役務の提供を受ける場所
物品の製造や加工委託の場合は、物品を受け取る場所を記載します。情報成果物等を電子メールで受取る場合は、納品先メールアドレスを記載します。役務(サービス)の提供を受ける場合は、サービス受ける場所を記載します。なお、インターネット経由でのサービスのように場所の特定ができない場合は、記載は不要です。
以下に、「(1)給付内容」「(2)納品場所・役務の提供を受ける場所」に関する条文例を記載します。
例1:製造加工
1 業務内容
PS-1の製作
2 仕様
型式:PS-1
製品番号:570863-2
数量:1台
関連資料:図面番号IE-PS-122102、検査事項表
3 納入場所
○○○株式会社 東京営業所 3号棟
(東京都○○市○○1-2-3)
例2:原稿作成
1 業務内容
① Webサイト「XX」に掲載する○○に関する記事の作成
② 前号に付随する取材、写真撮影、画像データの提供
2 仕様
掲載媒体:Webサイト「XX」
成果物 :① キャッチコピー 1本(XX字以内)
② 小見出し 2本(各XX字以内)
③ 本文 3,000字以上5,000字以内
修正対応:○回まで無償
○回を超える修正は1回につき○○円(消費税別)
3 納品方法
Wordファイル形式で作成し、委託者の指定する電子メールアドレスへ送付する
例3:コンサルティング
1 業務内容
XXXに関する助言及び指導
2 提供内容
① オンライン会議又は電話による助言・指導
実施時間: 月○時間まで
超過料金:1時間あたり○○円(1時間未満切上げ・消費税別)
② 研修の実施
実施場所:○○○株式会社 東京工場(東京都○○市○○1-2-3)
実施回数:1回あたり○時間の研修を月○回まで
超過料金:1回あたり○○円(消費税別)
上記の条文例は「フリーランスとして安心して働ける環境を 整備するためのガイドライン(内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)https://freelance110.mhlw.go.jp/assets/pdf/pages/guideline/improve_guideline.pdf 」に掲載されている契約書の事例を、一部加筆・修正したものです。
(3)納品日・役務の提供を受ける期日
物品の製造や加工を委託した場合は、その物品を受け取る期日を記載します。
役務(サービス)の提供を委託した場合は、サービス受ける期日(又は期間)を記載します。
例1:物品の製造委託
受託者は、委託者に対し、本成果物を〇年〇月〇日までに第〇条に定める納品場所に納品しなければならない。
例2:役務の提供(相当期間に渡り提供する場合)
本件業務の委託期間は、 ○○年○○月○○日から○○年○○月○○日とする。
(4)代金の額
支払う代金の額を記載します。消費税をどう扱うか(税込み・税抜きなど)もはっきりさせておく必要があります。具体的な金額を記載するのが困難なやむを得ない事情がある場合は、算定方法を記載することが認められています。
例1:物品の製造委託
本件製造業務の対価は○○円(消費税別)とする。
例2:役務の提供(一回払い)
本契約に基づく委託料は〇〇円(消費税別)とする。
例3:役務の提供(月額報酬制)
本契約に基づく委託料は月額〇〇円(消費税別)とする。
例4:役務の提供(タイムチャージ制)
本契約に基づく委託料は一時間あたり〇〇円(消費税別)とする。
例5:役務の提供(報酬額算定方法による場合)
報酬の額は、以下の算定方法により算出された金額に、消費税等相当額を加算した額とする。
単 価:Aランク技術者:1時間当たり〇〇円
Bランク技術者:1時間当たり〇〇円
算定式:上記単価 × 実作業時間(受託者が作成し委託者が確認した作業報告書に基づく)
なお、基本契約で代金設定の条件を定める場合などで、委託事業者が一方的に代金を設定できる場合、「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」に該当する恐れがあるので注意が必要です。以下に、具体例で説明します。
例6:役務の提供(単価表による場合)
例6-1
本契約に基づく委託料は、委託者が別途定める単価表に基づき算出するものとする。
例6-2
本契約に基づく委託料は、両当事者が別途合意する単価表に基づき算出するものとする。ただし、経済情勢の変動、原材料費、人件費その他の事情により、いずれかの当事者から委託料の見直しについて協議の申出があった場合には両当事者は誠実に協議の上、その改定について定めるものとする。
例6-1の条項が直ちに取適法違反となるわけではありません。しかし、「委託者が定める単価表」という文言から、委託者が単価を一方的に決定・変更できるものと解釈されるおそれがあります。
取適法では、中小受託事業者から代金の額について協議を求められたにもかかわらず、協議に応じず一方的に代金の額を決定することが禁止されています。そのため、例6-1の条項を根拠として、「単価は委託者が決めるものであり、価格協議には応じない」という運用をすると、「協議に応じない一方的な代金決定」に該当し、取適法に違反する可能性があります。
これに対し、例6-2のように、単価表を当事者間の合意に基づいて定めることを明確にするとともに、委託料の見直しについて協議を行う旨を定めておけば、取適法の趣旨に沿った契約内容となります。ただし、契約書に協議条項を設けていても、実際に価格協議の申出があった際に協議を拒否した場合には取適法違反となる可能性があるため、契約の運用にも十分注意する必要があります。
(5)代金の支払期日
① 日付による特定
支払期日は、給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に、具体的な日を特定して定めなければなりません。「納品後○日以内」など、具体的な支払日が特定できない定め方は認められません。
例1:日付による特定
代金の支払期日は、○年○月○日とする。
(この日が、給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内となるように定める必要があります。)
② 月単位の締切制度
「毎月末日締切、翌月○日払い」といった月単位の締切制度を採用することもできます。この場合、例えばある月の1日に納品された商品について翌月末日に支払うとすると、暦日で数えれば60日を超えることがあります。しかし、月単位の締切制度では、31日まである月も30日までしかない月も、それぞれ1か月として扱います。そのため、翌月末日を支払期日とすることができます。
例2:月単位の締切制度
例2-1
委託者は、毎月1日から月末日までに受領した給付に係る委託料を、翌月末日を支払期日として支払うものとする。
なお、「役務提供委託、特定運送委託」については、同種の複数の役務が連続して提供される場合に、一定の要件の下で月単位の締切制度を利用する際、その月に提供された役務をまとめて、月末日を支払期日の起算点とすることができます。そのため、「毎月末日締切、翌々月末日支払」といった定め方も可能です。
例2-2(役務提供委託又は特定運送委託の特例)
委託者は、毎月1日から月末日までに受領した給付に係る委託料を、翌々月末日を支払期日として支払うものとする。
一方、「製造委託、修理委託、情報成果物作成委託」については、締切対象期間の末日を支払期日の起算点とする特例はありません。そのため、月末日締切とする場合には、翌月末日までに支払期日を設定する必要があります。
なお、請求書に基づいて委託料を支払うこととしている場合であっても、請求書の提出が遅れたことを理由として、あらかじめ定めた支払期日を後ろ倒しすることはできません。請求書の提出の有無にかかわらず、支払期日までに代金を支払う必要があります。
⇒ フリーランス法では?
フリーランス法においても、給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定める必要があります。
また、フリーランス法でも、月単位の締切制度を採用することは認められています。ただし、取適法における役務提供委託・特定運送委託のように、一定の要件を満たすことで月末を支払期日の起算点とする特例はありません。したがって「毎月末日締切、翌月末日支払」とすることは可能ですが、「毎月末日締切、翌々月末日支払」とすることはできません。
(6)代金の支払方法
①支払に手形は使えない
従前は認められていた手形での支払いは禁止されました。また、電子記録債権やファクタリングなどの金銭以外の支払手段に関しても、支払期日まで代金の満額と引き換えることが困難であるものは認められません。
例:銀行振込
委託者は、第〇条に定める代金を受託者の指定する金融機関口座に振込により支払う。
⇒ フリーランス法では?
フリーランス法では、手形による支払い自体は禁止されていません。もっとも、取適法とフリーランス法が重畳適用される取引では、取適法の支払方法に関する規制も適用されるため、手形による支払いは認められません。
② 振込手数料
取適法では、合意の有無にかかわらず受託者に負担させることは「減額」として違反となります。
例:振込手数料
前項に定める振込にかかる振込手数料は、委託者の負担とする。
⇒ フリーランス法では?
フリーランス法でも、フリーランスとの合意の有無にかかわらず、振込手数料をフリーランスに負担させ、その額を報酬から差し引いて支払うことは、報酬の減額に該当し、原則として禁止されています。
(7)支払遅延利息
下請法では、委託事業者が代金の支払を遅延した場合に限り、遅延利息の支払義務が課されていました。これに対し、取適法では、支払遅延の場合に加え、委託代金を不当に減額した場合には、その減額分についても遅延利息を支払う義務が新たに設けられました。遅延利息の利率は、年14.6%と定められており、当事者間でこれと異なる合意をしていたとしても、その合意にかかわらず適用されます。
例:遅延利息
委託者が代金の支払を怠ったときは、委託者は、支払期日の翌日から完済に至るまで年14.6%の割合による遅延損害金を受託者に支払うものとする。
⇒ フリーランス法では?
フリーランス法でも、フリーランスに支払うべき報酬を不当に減額することは禁止されています。ただし、取適法のように、不当に減額した額について年14.6%の遅延利息を支払う義務はありません。もっとも、取適法とフリーランス法が重畳適用される取引では、取適法の規定も適用されます。そのため、不当に報酬を減額した場合には、減額した額を支払うことに加え、その未払額について年14.6%の遅延利息を支払う義務が生じます。
(8)検査
取適法では、委託者が検査を行う場合には、発注時に検査完了期日(年月日又は受領後○日目など)を明示しなければなりません。
また、支払期日を定める際の基準となる「受領日」を、検査完了日や検査に合格した検収日とすることはできません。検査を行う場合であっても、委託者が目的物を受け取った時点で「受領」となり、原則としてその日から支払期日の期間を計算します。そのため、「検査に合格した日から○日以内に支払う」といった定め方は、取適法上の支払期日の定めとして認められません。
例:検査及び検収の実施
1 委託者は、受託者から本件成果物の納品を受けたときは、あらかじめ定めた検査基準に基づき、遅滞なく検査を行うものとする。
2 項の検査は、本件成果物の受領日から起算して〇日以内に完了するものとする。
3 委託者は、検査の結果、本件成果物が検査基準に合格したときは、直ちに受託者に対しその旨を通知するものとする。当該通知をもって検収完了とする。
4 本件成果物が検査基準に適合しない場合、委託者は受託者に対し、不合格の理由を付して速やかに修復又はやり直しを求めることができる。ただし、委託者があらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくし、不当にやり直しをさせることはできない。
⇒ フリーランス法では?
フリーランス法でも、委託者が検査を行う場合には、その完了期日を明示する必要があります。また、報酬の支払期日は、検査日や検収日を基準として定めることはできません。検査完了期日の明示義務に加え、検査・検収の完了を待って支払期日の起算日を後ろ倒しできない点も、取適法とフリーランス法に共通するルールです。
(9)知的財産権
委託業務においてイラスト、記事、写真、動画、プログラムなどが作成される場合には、著作権その他の知的財産権の取扱いについて、契約書で定めておくことが重要です。
取適法では、給付の内容に知的財産権が含まれる場合、その譲渡や利用許諾に係る対価を考慮せず、通常支払われる対価より著しく低い代金を定めることが禁止されています。そのため、知的財産権の譲渡や利用許諾を含む業務を委託する場合には、どの権利について、どのような条件で譲渡・利用許諾するのか、また、その対価をどのように定めるのかを、あらかじめ明確にしておくことが重要です。
以下では、給付の内容に著作物が含まれている場合について説明します。
著作権は、原則として著作物を創作した者に帰属します。そのため、業務を委託しただけでは、成果物の著作権が当然に委託事業者へ移転するわけではありません。
委託事業者が成果物を利用するためには、著作権の譲渡を受けるか、著作権は中小受託事業者に残したまま利用許諾(ライセンス)を受けるなど、著作権の取扱いについてあらかじめ取り決めておく必要があります。特に、著作権の譲渡や利用許諾を委託料に含める場合には、その内容や対価について両当事者の認識に齟齬が生じないよう、契約書で明確にしておくことが重要です。
利用許諾とする場合には、対価のほか、利用範囲、利用期間、第三者への再許諾の可否などの条件を定めます。また、譲渡・利用許諾のいずれの場合でも、成果物の修正や改変を予定している場合には、著作者人格権にも配慮し、必要な取決めを行っておく必要があります。
例1:著作権を譲渡する場合
1 受託者は、本業務により作成した成果物に係る著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む。)を、成果物の引渡し及び委託料の完済を条件として、委託者に譲渡する。
2 前項の著作権譲渡の対価は、本契約に基づき委託者が支払う委託料に含まれるものとする。
3 受託者は、委託者及び委託者が指定する者に対し、成果物に係る著作物の利用について、著作者人格権を行使しないものとする。
※著作権譲渡の対価を別途定める場合は、第2項を次のようにします。
2 委託者は、前項の著作権譲渡の対価として、受託者に対し金○○円(消費税別)を支払う。
例2:著作権を実施許諾する場合
1 本業務により作成された成果物に係る著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む。)は、受託者に帰属する。
2 受託者は、委託者に対し、成果物に係る著作物を、委託者の事業のために利用することを、非独占的かつ期間の定めなく許諾する。
3 前項の利用許諾の対価は、本契約に基づき委託者が支払う委託料に含まれるものとする。
4 受託者は、委託者に対し、成果物に係る著作物の利用について、著作者人格権を行使しないものとする。
※実施許諾の対価を委託料とは別に定める場合は、第3項を次のようにします。
3 委託者は、前項の利用許諾の対価として金○○円(消費税別)を受託者に支払う。
著作権の基礎知識や契約上の注意点については、次の記事をご参照ください。
著作権の基礎知識|契約書の知的財産条項を正しく作成・チェックするために
契約書の知的財産権条項(著作権編)|「知的財産権の帰属」と「第三者の権利侵害」のポイントを解説
(10)資本金・従業員数の通知義務
取適法では、資本金の額に加えて、新たに従業員数による基準が導入されました。そのため、委託事業者が中小受託事業者の「資本金の額」や「常時使用する従業員数」を正確に把握することが重要となります。しかし、これらの情報を委託事業者が自ら把握することは容易ではありません。
そこで、中小受託事業者に資本金の額及び従業員数の報告義務を課し、委託事業者が取適法の適用の有無を判断するための資料とすることが考えられます。このような報告義務を課したからといって、委託事業者が法令遵守上の責任を免れるものではありませんが、取適法の適用関係を適切に確認するための社内体制を整備していたことを示す資料の一つとすることができます。
例:資本金及び従業員数の申告
1 受託者は、本契約の締結時点における自己の資本金の額(法人の場合に限る。以下同じ。)及び常時使用する従業員の数を、委託者に対し書面又は電磁的方法により通知するものとする。受託者が法人でない場合は、常時使用する従業員の数のみを通知するものとする。
2 委託者は、本契約に基づく個別の業務委託(取適法上の製造委託等に該当するものに限る。)に際し、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(以下「取適法」という。)上の適用関係を確認する必要があると認めるときは、受託者に対し、その時点における資本金の額及び常時使用する従業員の数の確認を求めることができる。受託者は、委託者から確認を求められたときは、遅滞なくこれに回答するものとする。
3 受託者は、第1項の通知内容に変更が生じ、当該変更により、取適法に定める資本金基準又は従業員数基準への該当性に影響を及ぼす可能性があると合理的に判断される場合には、変更後○営業日以内に、その旨及び変更後の内容を委託者に対して通知しなければならない。
7.まとめ
取取適法の施行により、発注者と受注者との取引では、取引条件をこれまで以上に明確に定め、適正な取引を行うことが求められるようになりました。特に、代金の決定方法、支払期日の定め方、振込手数料の取扱い、知的財産権の取扱いなどについては、取適法に適合した形で取り決めることが重要です。
適切に整備された契約書は、取適法違反のリスクを軽減するだけでなく、発注者・受注者双方が安心して取引を進めるための重要な基盤となります。
こんなことでお困りではありませんか?
- 自社の取引が取適法の対象になるのか判断が難しい
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- 既存の契約書をどこまで修正すればよいのか分からない
このような場合には、専門家に相談することも一つの方法です。
当事務所では、取適法に対応した業務委託契約書の作成・チェックを承っております。「これから取引を始めるので契約書を用意したい」「現在使用している契約書を取適法に対応させたい」といったご相談にも対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

この記事の著者:加藤達夫(行政書士)
契約書業務を専門とする行政書士。大手企業の法務部門で37年間、契約実務に従事した後に独立。現在は、日本語・英語双方の契約書の作成に対応しています。ベンチャー企業から中小企業まで、幅広い事業者の契約実務をサポート。条文の背景や潜在的なリスクを分かりやすく説明し、実務で使える契約書の作成を心がけています。
当事務所では、契約書の作成に関するご相談を承っております。
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