特定商取引法に基づく表示とは?その必要性と作成のポイントをわかりやすく解説

インターネット通販

1.はじめに

特定商取引法は、通信販売や訪問販売など、消費者との間でトラブルが生じやすい7つの取引類型について、事業者が守るべきルールを定めた法律です。事業者による違法・悪質な勧誘行為などを防止し、消費者が安心して取引できるようにすることを目的としています。

この法律では、取引の類型ごとに、事業者が表示すべき事項や遵守すべきルールが定められています。本稿では、その中から「通信販売」を取り上げ、インターネット上で商品を販売したりサービスを提供したりするインターネット通販(ECサイト)を具体例として、表示が義務付けられている事項をわかりやすく解説します。

2.特定商取引法と通信販売

特定商取引法において、通信販売とは、事業者が新聞、雑誌、インターネットなどで広告を行い、その広告を見た商品の購入者や、オンライン講座・情報配信サービスなどのサービスの利用者(以下、「購入者等」という。)から、郵便、電話、インターネットなどの通信手段を通じて申込みを受ける取引をいいます。

また、このほかにも、ゴルフ場やスポーツクラブの利用権、コンサートチケットなど、法律で定められた「特定権利」も通信販売の対象となります。

通信販売では、購入前に商品やサービスの内容を直接確認することができません。そのため、購入者等が取引条件を十分に理解したうえで安心して商品を購入したりサービスを利用したりできるよう、事業者には、販売価格、支払方法、返品・解約条件など、法律で定められた事項を表示することが義務付けられています。

これらの表示が不十分であったり、誤った内容であったりすると、購入者等が取引条件を正しく理解できず、特定商取引法に違反するおそれがあります。その結果、行政指導や業務停止命令などの行政処分の対象となる場合があります。

なお、事業者が電話で商品やサービスを勧誘し、その結果として申込みを受ける場合は、通信販売ではなく「電話勧誘販売」に該当します。この場合は、通信販売とは異なる規制が適用されます。

また、オンライン英会話やオンラインのパソコン教室などについて、一定期間を超えて継続的にサービスを提供し、契約金額が一定額を超える場合には、「特定継続的役務提供」にも該当することがあります。この場合は、通信販売に係る規制に加え、特定継続的役務提供に係る規制がかかることになります。

3.通信販売における情報提供義務

スマホへのお知らせ

特定商取引法では、通信販売を行う事業者に対し、購入者等に一定の事項を表示することを義務付けています。通信販売における表示義務は「広告の表示」、「特定申込みを受ける際の表示」、「申込みの撤回・解除(返品特約)に関する表示」の三つに分けて考えると理解しやすくなります。

(1)広告の表示

通信販売では、商品やサービスの販売・提供に関する条件を広告で示す際、販売価格、支払方法など、法律で定められた事項を表示しなければなりません。

ここでいう「広告」は、新聞や雑誌、バナー広告などのいわゆる宣伝広告に限られません。インターネット通販の商品・サービスの販売ページなど、商品やサービスの内容や販売・提供条件を表示し、そこから申込みを受けるものも、特定商取引法上の「広告」に該当します。つまり、特別に広告ページを設けていなくても、通常の商品・サービスの販売ページ自体が広告として規制の対象となる場合があり、法令に基づく表示を適切に行う必要があります。

⇒ 「4.広告の表示」参照

(2)特定申込みを受ける際の表示(最終確認画面の表示)

「特定申込み」とは、事業者が定める様式等により契約の申込みを行う場合をいいます。インターネット通販では、購入者等が注文ボタンや申込ボタンなどをクリックすることで契約の申込みが完了する方法がこれに該当します。

この場合、申込ボタン等をクリックする直前の最終確認画面において、取引の基本的な事項を表示することが義務付けられています。つまり、広告における表示に加え、申込みの最終確認画面でも法律で定められた事項を表示する必要があります。

⇒ 「5.特定申込みを受ける際の表示(最終確認画面の表示)」参照

(3)申込みの撤回・解除(返品特約)に関する表示

通信販売にはクーリング・オフ制度(無条件で契約を解除できる制度)は存在しません。その代わり、商品(特定権利)が届いてから8日以内であれば、商品に欠陥がない場合でも返品ができるという返品制度が導入されています。

この返品制度は、「特約」を定めた場合は特約が優先され、購入者からの一方的な返品ができなくなります。この特約についは明確な表示が求められており、インターネット通販の場合は、広告での表示に加えて、申込の最終確認画面での表示も必要です。

⇒ 「6. 申込みの撤回・解除(返品特約)に関する表示」参照

4.広告の表示

価格等の条件表

(1)広告の表示

通信販売は、事業者と、購入者等が直接対面しない隔地者間の取引であり、販売条件などの重要な情報は主に広告を通じて提供されます。そのため、広告の記載が不十分又は不明確であると、後日のトラブルにつながりやすくなります。こうした問題を防ぐため、特定商取引法は通信販売の広告において表示すべき事項を具体的に定めています。

(2)広告に表示すべき事項

通信販売の広告において表示が必要な事項(必要的記載事項)は次のとおりです(特定商取引法11条)。

通信販売の広告の表示事項

販売価格(役務の対価)と送料商品や権利の販売価格やサービスの対価を表示します。消費税込みの総額表示が必要です。販売価格に送料が含まれない場合は、送料の具体的な金額も表示する必要があります。
商品代金(役務の対価)の支払時期と支払方法クレジットカード、銀行振込、代金引換など利用可能な決済手段をすべて明記します。また、「注文後〇日以内」や「商品到着後〇日以内」などの具体的な支払期限(時期)もあわせて表示します。
商品の引渡時期(役務の提供時期)注文確定や支払い確認の後、実際に購入者等の手元に商品が届くタイミング、またはサービスが提供される時期を具体的に表示します。
申込期間に関する定め期間限定販売やカウントダウンセールなど、商品やサービスの申込みに特定の受付期間や期限が設けられている場合に、その具体的な期間や期限の条件を表示します。
契約解除や返品に関する事項商品の返品やキャンセル(申込みの撤回や解除)ができるかどうか、返品を受け付ける場合の条件(届いてから〇日以内、未開封に限るなど)、返品時の送料を事業者と購入者のどちらが負担するかなどを表示します。
事業者の氏名(名称)、住所、電話番号個人事業主の場合は「戸籍上の氏名」または「商業登記簿に記載された商号」、法人の場合は「登記簿上の正式名称」を表示します。また、法人の登記住所または実際の事業所住所、確けい実に連絡が取れる電話番号も正確に表示します。
法人がインターネット広告を行う場合の代表者または運営責任者の氏名事業者が法人であり、ウェブサイト等のインターネット上で広告を行う場合に、その法人の「代表者氏名」、または実務上の「通信販売業務の責任者氏名」を表示します。
国内事務所の場所と電話番号(外海事業者の場合)海外の法人、または海外に住所を持つ個人が事業者であり、かつ日本国内に事業を行う事務所、事業所、代理店などがある場合、その国内事務所等の住所と電話番号を表示します。
販売価格、送料等以外に必要な費用設置費、梱包料、代金引換手数料、銀行振込手数料など、商品価格・サービス対価や送料のほかに、購入者等が支払う必要のあるすべての費用の内容と具体的な金額を表示します。
商品に不具合等があった場合の取決め(契約不適合責任)届いた商品が壊れているなど、種類や品質に関して契約内容に合致しない場合に、交換、返品、修理などの対応(契約不適合責任)を行うかどうか、行う場合はその条件(対応期間や送料の負担、欠品時の対応など)を表示します。表示がない場合は民法の一般原則が適用されます。
ソフトウェア取引での動作環境パソコン・スマホ用のソフトウェアやアプリ、またはインターネットを通じて映画、音楽、写真などのダウンロード・視聴をさせるデジタルコンテンツを販売する場合に、正常に動作・視聴するために必要な対応OS、メモリ容量、空き容量などの推奨スペックを表示します。
契約を2回以上継続して締結する必要があるときの条件いわゆる「定期コース」などの契約(2回以上継続して商品を購入・契約する必要がある取引)である場合に、定期契約である旨、各回の分量やお届け時期、各回の支払金額および総額、契約期間(回数縛りの有無など)、途中解約時の条件などを表示します。
商品の販売数量制限などの特別な販売条件(役務の提供条件)商品の販売数量に制限がある場合(「お一人様〇個まで」「先着〇名様」など)や、特定の地域には配送できないなど、取引における特別な制限や条件があればその内容を表示します。
カタログ等の送付にかかる費用広告の表示事項の一部を表示しない(省略する)場合であって、省略された販売条件が記載されているカタログ等を購入者等の請求により別途送付し、その実費(送付費用等)を消費者に負担させるときに、その具体的な金額を表示します。
電子メールによる商業広告を送る場合の事業者の電子メールアドレス電子メール(メルマガ等)を送信して商品やサービスの広告を行う事業者の場合には、確実に連絡が取れる電子メールアドレスを表示することが義務付けられています。

(3)広告の表示(特定商取引法に基づく表示)の例

法律で定められた事項を表示するために、専用のページを設けることまでは求められていません。しかし、見やすさや管理のしやすさから、複数の商品・サービスに共通する事項を一箇所にまとめ、「特定商取引法に基づく表示(表記)」として掲載し、各商品・サービスの紹介ページからリンクを設ける方法が一般的です。以下に、具体例を示します。

特定商取引法に基づく表示(例)

事業者名         ○○株式会社
代表者代表取締役 ○○ ○○
所在地〒000-0000 東京都○○区○○1-1-1
電話番号03-XXXX-XXXX 
受付時間:10:00~18:00(土日祝日を除く)
メールアドレス○○@example.co.jp
商品代金各商品の紹介ページに記載しています。
商品代金以外に必要な料金送料(全国一律○円)、銀行振込手数料、代引き手数料(○円)
お支払方法とお支払の時期クレジットカード:商品注文時にお支払いが確定します。
代金引換:代金は商品お届け時に配送員に現金でお支払いください。
コンビニ決済:ご注文から○日以内に、コンビニでお支払いください。
商品の引渡時期注文確定後(コンビニ決済の場合は支払い確認後)、○営業日以内に発送します。
キャンセル・返品について【キャンセル・返品を受けない場合の例】
・お申込み後のキャンセルはお受け致しかねます。
・不良品の場合を除き、返品には応じておりません。
・商品に不良がある場合は、商品到着後○日以内に上記連絡先までご連絡ください。返品にかかる送料は弊社で負担します。

【キャンセル・返品を受ける場合の例】
・本サイトで販売する商品については、ご注文完了後○時間以内は、ウェブサイト上の手続によりご注文のキャンセルが可能です。
・商品が到着した日から○日以内は、原則として返品(全額返金)を承ります。上記連絡先までご連絡ください。
・不良品の場合を除き、返送料についてはお客様のご負担となります。

なお、販売価格、送料以外に購入者等が負担すべき金銭、ソフトウェアの動作環境など、商品ごとに内容が異なる項目については、各商品の広告ページで個別に表示します。また、「(5)記載事項の省略」で説明するように、一部の記載事項については省略も可能です。

(4)各項目を記載する際のポイントと注意点

特定商取引法における広告表示は、購入者等が、契約前に支払金額、支払条件、事業者の情報などを正確に把握し、取引内容を適切に判断できるようにすることを目的としています。そのため、曖昧な表現を避け、具体的な条件を明確に示し、購入者等が容易に確認できる構成とすることが、すべての表示項目に共通する基本的な考え方です。以下では、各項目を記載する際のポイントや注意点を示します

① 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号

事業者の身元が明確に分かるよう、正式な情報を正確に表示する必要があります。

  • 個人事業者は戸籍上の氏名又は登記商号、法人は登記簿上の名称を表示する
  • 通称・屋号・サイト名のみは不可
  • 実在し、確実に連絡が取れる住所・電話番号が必要
  • バーチャルオフィスの場合は、バーチャルオフィス事業者との間で必要な合意があり、個人事業主本人の現住所・本人名義の電話番号が把握され、確実に連絡を取れる体制が整っていることが必要
  • 法人がインターネット等で広告する場合は代表者又は業務責任者の表示も必要(業務責任者の場合、役職や代表権の有無は問われない)


② 販売価格・役務の対価と送料

商品やサービスの販売価格を表示します。販売価格に送料が含まれていない場合は、送料を別途、金額で表示しなければなりません。「送料実費」などの曖昧な表現は認められません。販売価格のみ表示されている場合には、送料はその中に含まれているものと推定されます。

  • 消費税を徴収する場合は、購入者が実際に支払う税込価格(総額)を表示する
  • 送料は原則金額表示。広告スペースが不足している場合は、最高・最低額や平均額、数例の提示も認められるが、購入者等の請求に応じて詳細を提供できるようにする
  • 外部リンクを使う場合は、送料が具体的に確認できるページに直接リンクさせる


③ 販売価格、送料等以外に必要な費用

商品の販売価格や送料、サービス対価のほかに、購入者等が負担する費用がある場合は、その内容と金額を明確に表示する必要があります。

  • 工事費、設置費、組立費、梱包料、代金引換手数料などが該当する
  • 費用は金額を具体的に表示する
  • 「別途手数料あり」「実費」「一般的な費用」など、金額が分からない抽象的な表示は認められない


④ 商品代金(役務の対価)の支払時期と支払方法

購入者等が代金・対価をいつ、どの方法で支払う必要があるのかを、具体的に表示する必要があります。支払時期については前払い・後払いの別や具体的な期限を示すこと、利用できる支払方法はすべて表示することが求められます。

  • 支払時期は「いつまでに支払うか」が分かるように示す
  • 利用できるすべての支払方法(銀行振込、クレジットカード、代金引換、現地決済等)を漏れなく表示する
  • クレジットカードのブランドや、電子マネー、スマホ決済、代金引換等のサービス名を表示することが望ましい


⑤ 商品の引渡時期(役務の提供時期)

申込み後、いつ商品が引き渡されるのか、又は役務が提供されるのかを、期間又は期限をもって明確に表示する必要があります。配送地や運送業者などによって到着日が異なる場合は、発送時期を表示する方法もあります。

  • 引渡し・提供の時期は、「○日以内」「○月○日まで」など、期間又は期限をもって明確に表示する
  • 支払方法に応じて引渡時期の基準が異なる場合は、その条件を含めて具体的に表示する
  • 前払いの場合は、「代金入金確認後○日以内に発送」「代金入金確認次第、速やかに発送」など、入金後の引渡時期が分かるように表示する
  • 「直ちに」「即時」など、速やかな引渡しを意味する表示も認められるが、「入荷次第」など、具体的な時期が分からない表示は避ける


⑥ 申込期間に関する定め

商品やサービスの申込期限を設けている場合には、その具体的な期間や期限を表示します。

  • 「10月1日から7日間」といった期間限定販売や、「セール終了まで あと2日」といった購入期限のカウントダウンなどが該当する
  • 「今だけ」「期間限定」「お早めに」といった、具体的な期間を特定できない抽象的な表示は認められない


⑦ 契約解除や返品に関する事項

商品・特定権利の売買契約については、返品特約を設けていない場合、特定商取引法第15条の3(法定返品権)により、原則として商品等の引渡しを受けた日から8日以内であれば、申込みの撤回や契約の解除ができます。

一方、法令の要件を満たす返品特約を設けている場合は、その特約が適用されます。そのため、返品特約を設ける場合はその内容を、設けない場合は法定の申込みの撤回・契約解除に関するルールを踏まえて表示する必要があります(6.申込みの撤回・解除(返品特約)に関する表示 参照)。

なお、役務(サービス)には、商品・特定権利の売買契約を対象とする第15条の3の法定返品権は適用されません。ただし、役務の申込みの撤回、契約解除、中途解約等について定めがある場合は、その内容を分かりやすく表示する必要があります。

  • 商品(特定権利)について返品特約を設ける場合は、返品の可否、期間、条件、返品にかかる送料の負担などを表示する。特約を設けない場合は、特定商取引法第15条の3(法定返品権)に基づく申込みの撤回・契約解除のルールを踏まえて表示する
  • 役務(サービス)については、申込みの撤回、契約解除、中途解約の可否や条件などを表示する
  • 定期購入の場合は、解約の期限・方法、違約金や解約料の有無などを表示する


⑧ 商品に不具合等があった場合の取決め(契約不適合責任)

商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任について、特約を設ける場合は、その内容を表示します。

  • 「個別に相談」「状況に応じて対応」などの曖昧な表現は避け、契約不適合があった場合の対応を具体的に表示する
  • 特約を設けない場合は、民法の一般原則が適用される。例えば、民法では、種類又は品質に関する契約不適合について、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、原則として、その不適合を理由とする履行の追完、代金の減額、損害賠償、契約の解除などをすることができないと定められている。そのため、商品や取引の内容に応じて、契約不適合があった場合の対応を具体的に定めておくことが望ましい
  • 本項目は「商品」の不適合に関する販売業者の責任を対象とした表示事項であるため、オンライン講座やコンサルティングなどの役務について、この項目自体の表示義務はない。ただし、契約で定めた内容どおりにサービスが提供されなかった場合の対応(例:システムの不具合で利用できなかった場合の返金基準や代替提供のルール)については、具体的に定め、分かりやすく表示しておくことが望ましい


⑨ ソフトウェア取引での動作環境

パソコンやスマートフォン用のソフトウェア、アプリ、インターネットを通じて視聴・ダウンロードさせるデジタルコンテンツ(映画、音楽、電子書籍など)を販売する場合には、必要な動作環境を表示する必要があります。

  • 対応OS、CPU、メモリ容量、ハードディスク(ストレージ)の空き容量などを具体的に表示する

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各項目の記載方法の詳細については消費者庁の「特定商取引ガイド」にある「通信販売広告について」https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/advertising.htmlをご参照ください。

(5)記載事項の省略

広告のスペースには限りがあることから、表示事項を一部省略可能です。表示を省略できるのは、「請求があれば遅滞なく提供する」措置を講じている場合に認められる例外措置です。そのため、購入者等からの請求があれば、これらの事項を記載した文書又は電子メール等を遅滞なく提供できるするようにしておくことが必要です。

表示事項と省略の可否

出典:消費者庁  特定商取引ガイド
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/

なお、消費者が取引において負担する金銭(販売価格、送料、手数料など)を省略する場合は、それらの項目をすべて一括して非表示(省略)にしなければならならず、一部の表示だけを省略することはできません。

また、広告(トップページや商品ページ)で省略していたとしても、最終確認画面で表示が必要な事項は、消費者が実際に申し込む直前の段階では必ず表示しなければならないので注意が必要です(「5.特定申込みを受ける際の表示」参照)。

(6)表示の注意点

特定商取引法に基づく表示は、購入者等が容易に見つけて確認できる場所に掲載することが重要です。たとえば、サイトのヘッダーやフッターに「特定商取引法に基づく表記」へのリンクを設ける方法が一般的です。

また、返品・解約条件や送料負担など、購入者等の判断に重要な事項は、他の情報に埋もれないよう、十分な文字サイズを用いるほか、太字や色分けなどにより、見やすく分かりやすく表示するようにします。

5.特定申込みを受ける際の表示(最終確認画面の表示)

インターネット通販で契約の申込みを受ける場合は、購入者等が申込みボタンや注文確定ボタンなどをクリックして契約を申し込む直前の「最終確認画面」において、次の6つの事項を表示しなければなりません。

この表示事項は「広告の表示」と一部重複しますが、広告の表示を行ったとしても、最終確認画面での表示を省略することはできません。ただし、表示スペースが足りない場合は、購入者等が明確に認識できる形式でバナーやリンクを設置し、詳細ページへ誘導する方法は認められています。

① 分量
 商品の数量や提供回数。定期購入の場合は、各回に届く分量を記載します。
② 販売価格・対価
 支払総額を表示します。定期購入の場合は、2回目以降の代金も明記が必要です。
③ 支払の時期・方法
 いつまでに支払うか、どのような支払方法が可能なのかを表示します。定期購入では各回の請求時期を表示します。
④ 引渡・提供時期
 商品がいつ届くかを表示します。定期購入では次回の発送時期も表示します。
⑤ 申込期間
 期間限定販売などの場合に、その申込み期限を表示します。
⑥ 申込みの撤回、解除に関する事項
 返品や解約の条件、方法、期限などを表示します。

②~⑥の記載方法については、「4(4)各項目を記載する際のポイントと注意点」をご参照ください。

 詳細は消費者庁の「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」をご覧ください。
https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20230421la02_09.pdf

6. 申込みの撤回・解除(返品特約)に関する表示

スマホ画面からの返品操作

(1)法定返品権

特定商取引法では、訪問販売や電話勧誘販売と異なり、通信販売にはクーリング・オフ制度(無条件で契約を解除できる制度)がありません。その代わりに、返品(契約の申込みの撤回等)に関するルール、いわゆる「法定返品権」が定められています(特定商取引法第15条の3)。

  • 原則(法定返品権)
    購入者は商品を受け取った日から8日以内であれば、契約の申込みを撤回し、または契約を解除することができます。この場合、返品にかかる送料は購入者の負担となります。
  • 返品特約の優先
    事業者が広告に返品の可否や条件(返品特約)を明確に表示している場合は、その特約の内容が法定のルールに優先します。そのため、「返品不可」や「商品到着後7日以内に限り返品可」といった特約を、商品ページや注文最終確認画面など購入前に購入者が確認できる場所に分かりやすく表示しておけば、その内容に従って返品の可否を定めることができます。

なお、この法定返品権は商品(および特定権利)の売買契約に適用される制度であり、オンライン講座や

情報配信サービスなどの役務(サービス)の提供契約には適用されません。役務については、キャンセルや中途解約の可否・条件を契約で定め、その内容を表示することになります。

(2)クーリング・オフと法定返品権の違い

クーリング・オフ制度は、不意打ち的な勧誘を受けた消費者を保護するための制度です。訪問販売や電話勧誘販売など、クーリング・オフが認められる取引では、事業者が特約によってこれを排除したり、購入者に不利な内容に変更したりすることはできません。

これに対し、法定返品権は、事業者が広告に返品特約を適切に表示することで、その内容を変更することができます。この点が、クーリング・オフ制度との大きな違いです。

クーリング・オフ(訪問販売等)法定返品権(通信販売)
対象となる取引      訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入など        通信販売
(インターネット通販・カタログ通販等)
消費者の負担原則、負担なし
(商品の引取りや返送に要する費用も事業者負担)
返品に要する費用(送料等)は購入者負担
期間法律で定められた内容が記載された書面を受領した日から8日間
(連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引等は20日間)
商品を受領した日から数えて8日以内
事業者の表示義務契約締結時等における書面交付義務あり返品に関するルール(返品不可等の特約を定める場合はその内容)を、広告および最終確認画面に表示する義務あり
特約による変更特約で消費者に不利に変更することは不可(強行規定)特約で「返品不可」としたり、返品の条件を変更したりすることが可能

(3)返品特約で定める事項

返品特約を定める場合は、少なくとも次の事項(返品特約に関する重要事項)を明確に表示する必要があります。

① 返品の可否
 返品を受け付けるか、受け付けないかを明確にします。
② 返品の条件
 「商品到着後○日以内」「未開封・未使用の場合に限る」など、返品を受け付ける条件を具体的に表示します。
③ 返品に係る送料の負担
 返品に要する送料を、事業者と購入者等のいずれが負担するのかを明確にします。

これらの事項は、購入者が容易に認識できるよう、他の表示に埋もれない方法で明瞭に表示することが求められます。たとえば、商品説明や申込みボタンの近くに表示する、十分な文字の大きさを用いる、太字や色文字を使用するなど、重要事項であることが一見して分かる表示方法が考えられます。

(4)返品特約の文例

  • 条件付きで返品を認める場合
    • 商品到着後〇日以内に限り、未使用の場合のみ返品を承ります。なお、お客様都合による返品の場合、返送料はお客様負担となります。
  • 返品を一切受け付けない場合
    • 商品の性質上、お客様都合による返品・交換は一切お受けできません。
  • 商品によって返品の可否を分ける場合
    • 以下の場合は返品不可となります。
      1. 食料品、2. 開封後のDVD、3. 衛生用品(下着類等)

7. 重複して複数の取引類型に該当する場合

ここまで通信販売について説明してきましたが、一つの取引が複数の取引類型に該当することがあります。その場合、それぞれの取引類型に該当する規制が重複して適用されることがあるため、注意が必要です。

たとえば、オンライン英会話は、インターネットを通じて申込みを受けてサービスを提供するため、通信販売に該当することがあります。さらに、2か月を超える期間にわたって継続的に英語を教え、契約金額が5万円を超える場合には、「特定継続的役務提供」にも該当します。また、オンラインのパソコン教室についても、2か月を超える期間にわたってパソコンの操作に関する知識や技術を教え、契約金額が5万円を超える場合には、同様に特定継続的役務提供に該当します。特定継続的役務には、通信販売とは別に、クーリング・オフ、中途解約、契約書面の交付などに関する規制が設けられています。

そのため、このようなサービスを提供する場合は、通信販売に関する規制だけでなく、特定継続的役務に該当するかどうかについても確認することが重要です。

 詳細は消費者庁の「特定商取引ガイド」にある「特定継続的役務提供」https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/をご参照ください。

8. 特定商取引法に違反した場合

事業者が特定商取引法に基づく表示義務その他の規定に違反した場合、主務大臣から違反行為の改善を求める「指示」を受けることがあります。

また、通信販売に係る取引の公正や購入者等の利益が著しく害されるおそれがある場合や、指示に従わない場合には、一定期間、通信販売に関する業務の全部または一部の停止を命じる「業務停止命令」が行われることがあります。さらに、業務停止命令と併せて、一定の範囲で役員等として業務を担当することを禁止する「業務禁止命令」が行われる場合もあります。

さらに、違反の内容によっては、罰金や拘禁刑などの刑事罰の対象となる場合もあります。

9.まとめ

特定商取引法に基づく表示は、購入前に商品やサービスを直接確認することができない通信販売において、事業者と消費者をつなぐ信頼の「道しるべ」です。内容が正確で、誰にでも分かりやすく整理されていれば、消費者は取引条件を十分に理解したうえで、安心して商品を購入したりサービスを利用したりすることができます。事業者は、常に消費者の立場に立ち、見やすく分かりやすい表示を心がけることが大切です。

なお、本稿では、通信販売に関する規制のうち、「広告の表示」、「特定申込みを受ける際の表示」「返品特約の表示」を中心に解説しました。特定商取引法では、このほかにも、「虚偽・誇大広告等の禁止」、「承諾のない電子メール広告・FAX広告の規制」など、事業者が遵守すべきさまざまなルールが定められています。通信販売を行う際には、表示に関するルールだけでなく、これらの規制についても理解し、適切に対応することが重要です。

詳しくは、消費者庁が公表している「特定商取引法ガイド」や市販の解説書等をご参照ください。
消費者庁「特定商取引法ガイド」https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/

こんなことでお困りではありませんか?

これから新しく事業を始めるにあたり、特定商取引法に基づく表示を初めて用意する場合、どこから手を付ければよいのか迷う場面もあるかと思います。

  • 自社の場合にどう当てはめればよいのか分からず、作成に着手できずにいる
  • 販売方法や返品条件など、自社の事業内容に合わせた表示を用意したいが、何を確認すればよいか分からない
  • 独力で作成することに不安があり、経験のある専門家に任せたい

このような場合には、専門家に相談することも一つの方法です。
当事務所では、特定商取引法に基づく表記の作成・チェックを承っております。お気軽にお問い合わせください。



この記事の著者:加藤達夫(行政書士)
契約書業務を専門とする行政書士。大手企業の法務部門で37年間、契約実務に従事した後に独立。現在は、日本語・英語双方の契約書の作成に対応しています。ベンチャー企業から中小企業まで、幅広い事業者の契約実務をサポート。条文の背景や潜在的なリスクを分かりやすく説明し、実務で使える契約書の作成を心がけています。

当事務所では、利用規約、プライバシーポリシー、Cookieポリシー、特定商取引法に基づく表示の作成に関するご相談を承っております。
ご相談およびお見積りは無料です。お気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。