英文契約書を複数言語で作る際の注意点|優先順位の定め方と言語条項例を解説

契約書をどの言語で作成するかは当事者の自由です。国際契約では英語で契約書を作成することが多いですが、当事者が英語を母国語としていない場合、当事者の自国語の契約書も作成することがあります。この場合、複数言語の契約書が存在することになるので、それぞれの位置づけに注意が必要です。

1.複数言語で契約書を作成する理由

通常、契約書を複数言語で作成する理由は、英文契約書に慣れてない、承認手続に必用であるといったい社内対応のために自国語の契約書を必用とする場合が多いと思います。また、国によっては監督官庁への契約書の提出が必要とされる場合もあります。例えば、中国企業が他国の企業とフランチャイズ契約やライセンス契約を結んだ場合は監督官庁への中国語の契約書(中国語以外で締結した場合はその中国語訳)の提出義務があります。

 

2.複数言語で作成する場合の注意点

契約書を複数の言語で作成すると、言語の違いによって解釈が分かれ、トラブルにつながるおそれがあります。

これは、法律用語を含む契約書を異なる言語に正確に翻訳すること自体が難しいうえ、翻訳が正確であっても、言語が異なれば解釈に差異が生じ得るためです。契約書の目的の一つは、当事者の合意を明文化し、共通の認識を持つことにありますが、言語の違いによって異なる解釈が生まれると、その目的が損なわれ、紛争に発展する可能性があります。

3.リスクの排除方法

上記のようなリスクを避けるためには、契約書は一つの言語で作成することが望ましいでしょう。

もし、複数言語の契約書を作成する場合は、どの言語を正本にするかを定めておきます。

This Agreement is made in English and Chinese. The English text is the original and the Chinese text is for reference purposes. If there is any conflict or inconsistency between these two texts, the English text shall prevail.
本契約は英語と中国語で作成される。英文は原本であり、中文は参考用である。これら2つの言語の間に矛盾や齟齬がある場合は、英文が優先する。

一方で、現地法により現地語での契約書作成が求められる場合などで、契約相手がその言語を理解できず、自国語版も正文とすることを主張するケースでは、両方の契約書を同等の位置づけにせざるを得ないことがあります。このような場合であっても、言語間で解釈の相違が生じた際にどの言語を優先すべきかを定めておくことが望ましいでしょう。

どうしても、優先順位を定めることについて合意が得られない場合は、言語間で解釈の相違が生じた際に、どちらが当事者の意図をより適切に反映しているかを協議して決定することになります。

This Agreement is written in both English and Chinese. Both language versions of this Agreement shall be authentic and have equal validity and legal effect. In the event of any discrepancy or inconsistency between the both language versions of this Agreement, the interpretation that most accurately reflects the mutual intent of the Parties shall prevail.
本契約は英語および中国語で作成される。本契約の双方の言語版は、いずれも正本であり、同等の効力および法的効果を有する。本契約の双方の言語版間に相違または矛盾が生じた場合、当事者双方の合意内容を最も正確に反映する解釈が優先される。