利用規約・プライバシーポリシー・特定商取引法に基づく表示。ウェブサービスに必要な3つの文書をまとめて解説

目次
1.ウェブサービスに必要な法的文書
インターネットで EC サイト、動画配信、クラウドサービスなどの ウェブサービスを提供する際には、次の文書を用意する必要があります。
「利用規約」と「プライバシーポリシー」は法的義務こそありませんが、利用者が安心してサービスを利用できるようにするため、ウェブサービスの種類にかかわらず整備しておくことが望まれます。
一方、「特定商取引法に基づく表示」は、商品販売や有償サービスの提供を行う場合に必ず掲示しなければならない法定の表示事項です。
これらの文書は、いずれも内容を自由に定められるわけではありません。利用規約は「 民法」の定型約款規定や「消費者契約法」、プライバシーポリシーは「 個人情報保護法」、特定商取引法に基づく表示は 「特定商取引法」が適用され、利用者保護のための義務や制限が設けられています。
そのため、ウェブサービスの提供者は、これらの法的要件を踏まえたうえで、各文書を適切に整備する必要があります。
2.各文書の概要
まず、3つの文書の概要を確認しましょう。
利用規約とは
利用規約とは、ウェブサービスに関して、サービスの提供者と利用者の契約内容を定めた文書です。
ウェブサービスは不特定多数の利用者を対象とするため、個別に契約内容を交渉・合意することは現実的ではありません。そこで通常は、サービス提供者があらかじめ利用規約を定め、利用者がサービスを利用時にその内容に同意することで契約が成立する仕組みが採用されています。
利用規約では、利用者の禁止事項、サービス提供者の責任範囲や免責事項、利用停止・退会に関する条件など、サービス運営に必要なルールを定めます。
プライバシーポリシーとは
プライバシーポリシーとは、サービス提供者が個人情報をどのように取得・利用・保管するのかについて定めた方針を明示する文書です。「個人情報保護方針」という名称が使われることもあります。
個人情報保護法では、利用目的の公表など、利用者に対して明らかにしなければならない項目が定められています。また、利用者の同意が必要となる場面では、その前提として必要な情報を分かりやすく提供する義務があります。
プライバシーポリシーを整備することで、これらの情報を利用者に一元的かつ分かりやすく提示でき、透明性の確保や利用者の安心につなげることができます。
特定商取引法に基づく表示とは
特定商取引法に基づく表示とは、利用者保護の観点から、通信販売を行う事業者が事業者名、所在地、連絡先、販売価格、支払方法、返品条件などの情報を明示するための文書です。
利用者が安心して取引を行えるよう、特定商取引法で表示が義務付けられています。
3.利用規約

(1)利用規約の役割と法的ポイント
利用規約は、サービス提供者と利用者の権利義務を定めた文書であり、ウェブサービス利用のための「ルールブック」といえます。サービス提供者の権利を適切に保護し、利用者とのトラブルを未然に防ぐ役割を果たすとともに、双方の責任範囲を明確にすることで、紛争発生時の法的リスクを軽減します。
多くのウェブサービスの利用規約は、不特定多数の利用者を対象として画一的に用いられるため、民法上の「定型約款」として扱われます。
定型約款が契約として効力を持つのは、次のいずれかに該当する場合です(民法548条の2・1項)。
- 利用者が利用規約を契約内容とすることに合意した場合
- サービス提供者が、あらかじめ利用規約を契約内容とする旨を利用者に表示していた場合
実務上は、利用登録や購入の画面に「利用規約に同意する」というボタンをクリックしたり、チェックボックスにチェックを入れなければ登録や購入ができない仕組みが用いられています。これは上記の「合意」に該当します。
また、利用規約の変更については、次のいずれかに該当する場合には、利用者の個別同意を得なくても変更後の規約が適用されます(民法548条の4・1項)。
- その変更が利用者の一般の利益に適合するとき
- その変更が契約の目的に反せず、変更の必要性や内容の相当性その他の事情を考慮して合理的であるとき
つまり、利用者に有利な変更に限らず、サービス内容の変更や料金の改定(値上げ)であっても、一定の合理性を満たす場合には、個別に同意を取得することなく変更が可能です。
なお、いずれの場合であっても、利用規約を変更する際には、変更の内容および変更後の規約の効力発生日を、利用者に対して適切な方法で周知する必要があります(同条2項)。
(2)主な記載内容
利用規約には、以下のような事項を記載します。
- どのような条件でサービスを利用できるのか
- 利用者にどのような行為を求め、または禁止するのか
- トラブルが生じた場合に、サービス提供者と利用者の責任をどのように分担するのか
利用規約の主な記載内容
| サービスの利用方法 | サービスの登録方法、IDやパスワードの設定・管理方法などを定めます。 |
| 料金と支払い方法 | サービスの利用料金や支払い方法を定めます。 |
| 禁止事項 | パスワードの貸与や不正アクセスの禁止など利用者がしてはならない事項を定めます。 |
| 免責事項 | サービス停止や終了時におけるサービス提供者の責任(免責)範囲を定めます。 |
| 権利の帰属 | サービス提供者が提供するITインフラやコンテンツに関する知的財産権や、利用者の投稿に関する知的財産の扱いなどを定めます。 |
| サービスの一時停止 | 点検や通信障害などによりサービスを提供できない場合の免責条件を定めます。 |
| サービスの変更・終了 | サービス内容の変更や提供終了を行う際の条件を定めます。 |
| 合意管轄 | 当事者間で紛争が発生した場合の第一審の専属管轄裁判所を定めます。 |
(3)作成上の注意点
利用規約は、原則としてサービス提供者がその内容を定めることができます。しかし、定型約款に該当する場合には、信義則に反し、利用者の利益を一方的に害する条項は無効となります(民法548条の2・2項)。たとえば、サービス提供者が勝手に料金を変えられるのに、利用者には解約の方法がない、といった内容は認められない可能性があります。
また、消費者向けサービスにおいては消費者契約法が適用され、事業者の損害賠償責任を全部免除する条項や、サービス提供者の故意または重過失による損害について責任を免除する条項など、利用者の利益を一方的に害する規定は無効となります(消費者契約法8条1項)。たとえば、「いかなる場合も事業者は一切責任を負わない」といった包括的な免責条項は、消費者契約法により無効となります。
利用規約の変更については、①変更が利用者の一般の利益に適合する場合、または、②契約の目的に反せず、かつ変更の必要性・内容の相当性その他の事情に照らして合理的である場合には、あらかじめ変更内容を周知することにより、利用者の個別の同意を得ることなく変更することができます(民法548条の4・1項)。
これらの要件を満たさない変更については、定型約款としての変更の効力は生じません。その場合、変更内容を利用者に適用するためには、個別の合意が必要です。
4.プライバシーポリシー

(1)プライバシーポリシーの役割と法的ポイント
プライバシーポリシーとは、サービス提供者が、利用者から取得する個人情報をどのような目的で利用し、どのように管理・提供するのかを説明する文書です。
法律上、作成が直接義務づけられているわけではありませんが、個人情報保護法が定める利用目的の通知・公表義務や、第三者提供に関する同意取得義務等を適切に履行するために、実務上重要な役割を果たす文書といえます。
サービス提供者は、個人情報を取得した場合には、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知し、または公表しなければなりません。そのため、あらかじめプライバシーポリシーに利用目的を定め、公表しておくことが実務上一般的です。
また、個人データ(個人データとは、個人情報のうち、コンピュータや名簿などで整理され、特定の人をすぐ探せるようにまとめられているものをいいます。)を第三者に提供する場合には、原則としてあらかじめ利用者本人の同意を得なければなりません。
そこで、プライバシーポリシーに第三者提供の有無や提供先の範囲、提供項目、利用目的などをあらかじめ明示し、その内容について同意を得る仕組みを設けておくことで、提供の都度同意を取得する場合と比べて、より効率的に同意を得ることができます。
(2)主な記載内容
プライバシーポリシーには、以下のような事項を記載します。
- どのような個人情報を取得するのか
- その情報を何の目的で利用するのか
- 第三者に提供するのか、提供する場合はどのような範囲か
- 利用者が、自身の個人情報についてどのような請求ができるのか
プライバシーポリシーの主な記載内容
| 取得する情報の種類 | 氏名、メールアドレス、Cookieなどサービス提供者が取得する情報の種類を定めます。 |
| 利用目的 | サービス改善、マーケティングなど取得した情報の利用目的を定めます。 |
| 第三者提供の有無 | 個人情報の第三者提供の有無や、提供する場合の要件等を定めます。 |
| 安全管理措置 | サービス提供者の社内規定の整備内容や、組織的、人的、技術的な面で講じている安全管理措置の内容を記載します。 |
| 開示・訂正・ 削除請求手続 | サービス提供者が、本人から個人情報の訂正や利用停止の請求等を受けるための手続や手数料を定めます。 |
(3)作成上の注意点
利用目的は抽象的にならないよう、利用者が合理的に予測できる表現で具体的に特定する必要があります。利用目的と異なる目的で個人情報を利用する場合には、利用者への通知または公表、場合によっては本人の同意が必要となるため、将来の利用可能性も考慮して利用目的を定めておくことが重要です。
個人情報を第三者に提供する場合、提供先の個別名称まで必ず明示する義務はないものの、提供先の範囲や属性を利用者が認識できる形で公表する必要があります(例:広告配信事業者、決済代行業者等)。
5.特定商取引法に基づく表示

(1)特定商取引法に基づく表示の役割と法的ポイント
特定商取引法は、消費者との間でトラブルが生じやすい取引について、事業者が守るべきルールを定めた法律です。規制の対象となる取引は7種類あり、インターネットを通じて商品を販売したり、有償のサービスを提供したりする場合は「通信販売」に該当します。
通信販売においてサービス提供者は、販売条件又は役務の提供条件についての広告に、取引に関する重要な情報を表示する義務があります(特定商取引法11条)。
(2)主な記載内容
通信販売の広告には、以下のような事項を記載します(特定商取引法11条)。
- 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
- 代金(対価)の支払時期、方法
- 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
- 申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容
- 契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(売買契約に係る返品特約がある場合はその内容を含む)
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
- 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名
- 事業者が外国法人又は外国に住所を有する個人であって、国内に事務所等を有する場合には、その所在場所及び電話番号
- 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容及びその額
- 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
- いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
- 契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件又は提供条件
- 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときは、その内容
- 請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
- 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス
各商品紹介のページに「特定商取引法に基づく表記(表示)」のリンクが貼られていることが多いと思いますが、これは共通する事項をまとめて掲載したものです。
なお、広告のスペースには限りがあるため、消費者から情報開示の請求があった際に遅滞なく提供する措置を講じている場合には、表示事項を一部省略することができます。
(3)作成上の注意点
表示内容は、利用者が容易に確認できる場所に掲載する必要があります。利用者が見つけやすいよう、専用の表示ページを作成し、トップページや運営会社情報ページなどから分かりやすくリンクを設ける方法が一般的です。
また、広告の表示とは別に、申込の最終確認画面に下記事項の表示が必要です(特定商取引法12条の6・1項)。
- 分量
- 販売価格・対価
- 支払の時期・方法
- 引渡・提供時期
- 申込期間
- 申込みの撤回、解除に関する事項
なお、通信販売では、販売業者が返品に関するルールを特に表示していない場合、利用者は商品を受け取ってから8日以内であれば、注文を取り消したり、契約を解除したりすることができます。
この返品ルールは、事業者があらかじめ返品に関する特約(「返品不可」「返品は〇日以内」など)を適切に表示している場合には適用されません(特定商取引法15条の3)。
ただし、返品特約を有効にするためには、「特定商取引法に基づく表示」ページに記載するだけでは不十分です。利用者が購入前に必ず確認できるよう、商品ページや申込みの最終確認画面などに、特約の内容を明確に表示する必要があります。
6.まとめ
ウェブサービスを安心して運営するためには、これら3つの文書を適切に整備することが欠かせません。そのためには、それぞれの文書が果たす目的と役割を理解し、自社のサービス内容に即した形で作成することが重要です。
利用規約には民法や消費者契約法、プライバシーポリシーには個人情報保護法、特定商取引法に基づく表示には特定商取引法といったように、それぞれ根拠となる法律は異なります。
したがって、各文書が適用法令と整合しているかを確認しながら作成することが不可欠です。こうした点から、専門家の助言を得て整備することをお勧めします。

筆者:加藤達夫(行政書士)
契約書業務を専門とする行政書士。大手企業の法務部門で約37年間、契約実務に従事した後に独立。現在は、日本語・英語双方の契約書の作成・チェックに対応しています。ベンチャー企業から中小企業まで、幅広い事業者の契約実務をサポート。条文の背景や潜在的なリスクを分かりやすく説明し、実務で使える契約書の作成を心がけています。
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