契約書様式のチェックポイント⑩ ―契約書の原本は何通作成すればよいのでしょうか―

契約原本の作成通数

ポイント1:契約書の作成数には決まりはありません

当事者の数に応じた通数の契約書

契約書の原本とは、当事者が記名押印または署名をした書面を指します。契約書の原本の作成通数(部数)に決まりはありません。

そもそも、保証契約など一部の契約を除き、契約書の作成は必須ではなく、当事者の合意があれば形式に関わらず契約は有効です。しかし、ビジネスにおいては、合意内容を明確にし、後の紛争を防ぐため、また万一紛争が生じた際の証拠とするために契約書を作成するのが一般的です

その際、通常は当事者の数に応じた通数の契約書を作成し、各自が一通ずつ保有します。例えば二者間の契約の場合、契約書を二通作成し、各当事者が一通ずつ保有するのが通例です。

ポイント2:「写し」を使用する場合のリスクを確認しましょう             

「写し」と「控え」の印鑑

当事者分の契約書を作成しないケース

契約書の原本は、通常、当事者の数に応じた通数を作成しますが、場合によっては一通のみ作成することもあります。

例えば、契約内容によっては高額な収入印紙が必要となるため、印紙代を節約する目的で契約書の原本を一通のみ作成し、他の当事者はその写し(コピー)を保有することがあります。

契約書の写しを使用する場合の注意点

契約書原本の代わりに写しを使用する場合、次のようなリスクがあります。
 ①契約書の原本を保有していない当事者は、写ししか持たないため、証拠能力が低くなる。
 ②契約書の原本を紛失した場合、契約内容の証明が困難になるおそれがある。
 ③原本を特定の当事者のみが保有することで、契約書の改ざんリスクが発生する。

実際には問題が発生することは稀ですが、特別な理由がない限り、当事者の数に応じた契約書を作成することを推奨します。

また、契約書の原本を一部のみ作成し、他の当事者が写しを保有する場合でも、以下のような措置を講じることで、契約の成立を証明する目的で作成されたとみなされる可能性があります。その場合、写しにも収入印紙が必要になることがあるため、注意が必要です
 ①契約書の写しに、契約当事者の双方または所持者以外の一方の、署名または押印を施す。
 ②契約書の写しに、「正本と相違ない」といった記載をする。

【参考】国税庁HP 
No.7120 契約書の写し、副本、謄本等
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7120.htm

ポイント3:作成通数と保有者の記載を確認しましょう                   

契約書の作成通数と保有者の取り決めは、契約書の後文(最後)に次のように記載するのが一般的です。

<契約書を当事者分作成する場合>
本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名捺印のうえ、各1通を保有する。

<契約書を1通のみ作成する場合>
本契約の証として、本書1通を作成し、甲乙記名押印の上、甲が原本を、乙がその写しを保有する。

ポイント4:電子契約の採用も検討しましょう                        

契約書の作成には、製本(袋とじ)や郵送でのやり取りなど、手間がかかります。しかし、近年普及が進んでいる電子契約を利用すれば、これらの作業が不要となり、メール送信によって当事者全員が原本データを受け取ることができます。さらに、電子契約は契約の種類に関係なく収入印紙が不要なため、印紙代の節約にもつながります。作業負担を軽減したい、コストを抑えたい場合は、電子契約の導入を検討するとよいでしょう。


電子契約に関しては、こちらの記事も参考にしてください。
電子契約① ― 電子契約とは ―   
電子契約② ― 導入の際に検討すべき事項 ―


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