電子契約① ― 電子契約とは ―


電子契約にはいろいろな種類がありますが、ここでは現在主流になっている「立会人署名型電子契約サービス(クラウドサイン、GMOサイン、DocuSign、freeeサインなどの電子契約サービス)」を中心に説明します。電子契約サービスを導入することはペーパーレス化によるメリットがありますが、契約書の締結ルールや保管方法などを新たに策定する必要もあります。

1.電子契約とは

電子契約とは、紙の契約書に代わり電子データで作成・締結される契約をいい、以下のような方式があります※。

※「電子委任状の普及の促進に関する法律」第 2条第2項には電子契約に関して次のような定義がなされています:この法律において「電子契約」とは、事業者が一方の当事者となる契約であって、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により契約書に代わる電磁的記録が作成されるものをいう。

(1)当事者署名型電子契約

契約当事者が、サービス提供者から発行される電子証明書と秘密鍵を用いて契約書データに電子署名(データを暗号化する。この処理を電子署名という)を行います。この契約書データは相手の公開鍵を用いて復号でき、相手側の署名者本人が署名したことを確認できる仕組みになっています。契約当事者の証明書を用いて電子署名するので、当事者署名型といいます。

実印を押した契約書を印鑑証明書とともに相手に送ることを電子的に行っているようなイメージです。

(2)立会人署名型電子契約

電子契約サービス事業者のサーバー上で、サービス事業者が電子証明書を用いて契約当事者が承認した契約に電子署名を行います。電子契約サービス事業者の電子証明書を用いて契約が適切に行われたことを証明するので、立会人型といいます。

契約当事者の電子証明書を用いないので証拠力は劣りますが、電子証明書を取得する手間と費用を省くことができます。

タブレット上でサインする、ウエブサイト上で同意ボタンをクリックする、印影データを貼りこむなどして契約の合意とするもの。あるいは、紙の契約書にサインをしたものをPDF等電子データに変換し、これを契約書として扱うものなどがあります。

(1)(2)(3)いずれの方式であっても契約当事者が合意すれば契約は成立します(ただし、一部の契約は書面の作成が契約の成立要件です)。
契約当事者が署名したことの証明力は、(1)>(2)>(3)の順に高いといえます。

2.電子契約のメリット・デメリット

(1)メリット

①業務効率化

 全ての処理がオンラインで完結するので契約締結までの時間が短縮され、事務作業が大幅に削減できます。契約書の印刷・製本、押印、郵送のために出社する必要がないのでリモートワークでも対応可能です。

②コスト削減

印刷、郵送費用が削減できます。紙の契約書と異なり印紙税も不要です。

③保管・管理の効率化

契約書をデジタルで保管できるため、スペースの節約と検索の容易さが向上します。

④リスク管理強化

なりすまし防止、改ざん防止が図れます。

(2)デメリット

①サイバ-攻撃のリスク

電子データで保存するため、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクがあります。

②契約相手の協力が必要

すべての取引先が電子契約に対応しているわけではなく、契約相手との調整が必要です。操作方法を説明するなどの手間がかかります。

③電子契約に対応していない契約がある

一部の契約は法的に電子契約に対応していません。

④契約業務ルールの検討が必要

紙と印鑑を用いた契約書作成とは処理フローが異なるため、運用ルールの検討が必要です。

立会人署名型電子契約の処理フローの一例を以下に示します(電子契約サービスによって処理フローは異なります)。

①契約内容の合意

合意までのプロセスはこれまと変わりません。対面やメール等で相手と契約交渉を行い、契約内容に合意します。

②電子契約による契約締結の合意・承認者の確認

電子契約を使用することについて契約相手の承諾を取ります※。合意が取れたら、契約の署名者のメールアドレスを相手と交換します※※。

※契約データは秘密情報に該当するので、データ管理に十分な安全対策がなされているかどうかなども承諾の条件になります。
※※紙の契約では、窓口担当者に契約書を送ると、その担当者が社内調整して締結権限者(代表取締役などの契約書の名義人)の印鑑をもらってくれます。一方、電子契約ではメールを受け取った本人が承認を行い、その履歴が契約合意の証拠となります。そのため、窓口担当者ではなく、締結権限者のメールアドレスを互いに通知しておく必要があります。

③自社での署名

担当者が電子契約サービス上で、契約データのアップロードと、自社と契約相手の署名者のメールアドレスを設定します。これに基づき、最初は自社の署名者にメールが届くので、メールにあるリンクから電子契約サービスにアクセスし契約内容を確認して署名します。

④契約相手の署名

自社での署名が終了すると、契約相手にメールが送信されます。同様に電子契約サービスにアクセスしてもらい契約に署名します。

⑤契約締結・契約データの保管

両者の署名が完了すると、契約が成立したことがメールで通知されます。電子契約サービスのクラウドストレージや自社サーバーに契約データを保管します

電子契約を導入することで業務効率化やコストダウンを図れますが、実際の導入には検討すべき点があります。これについては、別記事( 導入の際に検討すべき事項)で解説します。