契約書の訂正・修正方法 ―訂正印や修正契約書などについて解説します―

契約書の締結後に、誤りが見つかった場合や、内容を変更する必要が生じた場合はどうすればよいでしょうか※。
契約書を訂正する方法には、以下の4つがあります。
① 訂正印を用いて修正する。
② 捨印を用いて修正する。
③ 修正契約書を締結する。
④ 契約書を再締結する。
この中で、文字や単語レベルの軽微な修正には、訂正印を用いて契約書を修正する方法が適しています。また、条文の追加・削除や内容の変更が必要な場合には、修正契約書を用いて修正する方法が適しています。本稿では、これらの修正方法について説明します。
※これらの対応を表す用語として「訂正」「修正」「変更」などがありますが、本稿では「修正」を用いて説明します。なお、英文契約書の修正に関しては、こちらの記事を参考にしてください。
英文契約書の訂正・修正方法 ―削除・加入方法や修正契約書などについて解説します―
1.訂正印による修正
(1)修正方法
誤字脱字の訂正や単語のレベルの修正には、訂正印を用いて契約書を直接修正する方法が適しています。この場合、以下の手順に従います。
- 修正箇所を二重線で消す。その際、元の内容がわかるようにしておく。
- 修正箇所の上または下に正しい文字を記載する。
- 修正した削除・加入した文字数を記載する。
- 契約書に押した印鑑と同じ印鑑を用いて、契約書の当事者全員が「訂正印」を押印する。
① 削除と加入

② 削除のみ

③ 加入のみ

(注)追加する部分に「<」「∨」「{ 」などの記号を挿入し、文字を追加する位置がわかるようにします。
④削除と加入(削除・加入する文字数を離れた位置に記載する場合)

(注)削除・加入文字数を修正場所から離れた位置に記載する場合は、どの行に対して修正したか記載します。
(2)注意点
① 契約書に押印したのと同じ印鑑を使用する
訂正印は、契約書に押印した印鑑と同じ印鑑を使用し、かつ、契約書の当事者全員の訂正印が必要です。なお、印鑑でなく署名(サイン)で契約を締結した場合は、契約書の当事者が訂正箇所に署名します。
② 文字数の数え方
文字数は、文字の種別(ひらがな・カタカナ・漢字・英数字・記号など)には関係なく、1文字ずつ数えます。数字などが半角のときも、全角同様に1文字として数えます。
③ 捨印による修正
あらかじめ契約書の余白に押印しておき、誤りがあった場合に訂正印として使用する「捨印」という方法もありますが、契約内容を勝手に修正されるおそれがあるので、ビジネス契約には使用すべきではありません。
2.修正契約書による修正
(1)修正方法
条文の追加・削除や内容変更など、文字や単語レベルの変更では対応できない場合は、修正契約書で修正します。以下に、サンプル契約書を提示します。

(2)注意点
① 修正対象の契約を正確に特定しましょう
修正対象の契約書(原契約)を正確に特定し、間違いが生じないようにします。特定の方法として、以下の手段が考えられます。
(a)締結日で特定する
例:●年●月●日付で締結した契約書
(b)契約内容で特定する
例:●●製品の共同開発の可能性検討に関する●●契約書
(c)原契約のコピーを添付する
例:別紙1に添付する●●契約書
② 修正が有効になる日に注意しましょう
修正契約書を用いる場合、その締結日が原契約に対する修正の有効日になるので注意が必要です。過去に遡って有効にするなど、修正契約書の締結日と異なる日付から修正を有効にする場合は、その点を明記しておく必要があります(サンプル契約書の第4条参照)。
③ 印紙が必用な場合があります
原契約が印紙を必要とする課税文書の場合、修正契約書にも印紙が必要になることがあります。印紙の要否は、修正契約書に「重要な事項」が含まれているかどうかで判定されます。
例えば、業務請負契約(印紙が必要な第2号文書)の契約金額を変更する場合、契約金額の変更は重要な事項に該当するので、変更契約書に印紙が必用です。
【参考】国税庁HP
7127 契約内容を変更する文書
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7127.htm
印紙税法基本通達別表第2「重要な事項の一覧表」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/pdf/06.pdf
印紙に関しては、こちらの記事も参考にしてください。
契約書様式のチェックポイント⑦ ― 契約は相手との取決め・印紙税は国との取決めです ―
3.その他
(1 )契約書の再締結
契約書の修正方法には、上記の方法に加え、契約書自体を破棄して、修正を加えた新たな契約内容で再締結する方法もあります。この場合は、原契約を終了させて新たな契約書を締結するか、新たに締結する契約書の中に原契約の効力を失わせ文言を加えておくようにします。
(2)電子契約の訂正・修正
電子契約は非改ざん性があるため、締結済み契約書データに対する追加、変更、削除はできません。誤字脱字等の軽微な修正の場合でも、原契約とは別に修正契約書を作成するか、契約書を改めて作成して再締結する必要があります。
電子契約に関しては、こちらの記事も参考にしてください。
電子契約① ― 電子契約とは ―
電子契約② ― 導入の際に検討すべき事項 ―
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