契約書の読み方・作り方 ― 契約書の構成を理解して効率的にチェックしましょう ―

契約書は普段使用しない法律用語が使われていて読みにくいため、漫然とレビューしようとするとポイントが絞れずに苦労します。
「契約書の構成」を知っておくと「どこに何が書いてあるか」が俯瞰でき、「どこに注力すべきか」の方針が立てやすくなります。

契約書の内容は4つに分類できます

契約書の内容はその機能や特徴で4つに分類できます。
例として「自
社製品を、新規得意先に販売する」際に契約書で定められる条項で説明します。なお、説明のため代表的な条項に限定しています。

 A:取引自体の取決め 
   「対象製品」「受発注の方法」「検査・検収」「価格」「支払方法」 など
   契約書では前段に記載されることが多い
 B:取引に関する保証・責任の取決め
   「製品保証」「損害賠償」「知的財産保証」 など  
   契約書では中段に記載されることが多い
 C:取引期間に関する取決め
   「契約期間」「中途解約」「契約解除」 など
   契約書では中段・後段に記載されることが多い
 D:取引に関する補足の取決め    
   「秘密保持」「反社勢力の排除」「裁判管轄」 など
   契約書では後段に記載されることが多い
   

A:取引自体の取決め

Aは取引そのものの取決めです。

主として、以下の二点についてチェックします。
① 合意した内容が正しく、もれなく記載されているか
② 取引に必要な手続等に不足はないか
対象製品、価格、納期はもちろん、受発注や支払の手続については不足点がないかをチェックしましょう。
例えば支払については、どの請求をいつまでに相手に請求するのかの通知方法、それに対する支払い方法、支払期限、支払手数料の負担など後で問題にならないように取決めておく必要があります。 
(売買契約の場合は商品や不動産とその代金支払いが取引対象です。請負契約であれば仕事の完成とその報酬、ライセンス契約であれば特許・ノウハウ等とライセンス料が取引対になります。)

B:取引に関する保証・責任の取決め

Bは、品質保証、第三者の権利侵害に関する保証、問題が発生した場合の賠償責任などに関する取決めです。

ここでは、保証期間、保証の範囲、損害賠償額額の妥当性をチェックします。

売買において売主は過度な保証を避けたいと考えるでしょうし、反対に買主はできるだけ厚い保証を得たいと考えるでしょう。
賠償額によっては経営に大きな影響を与えることもありますので、慎重な検討が必要です。
 

C:取引期間に関する取決め

Cは契約期間に関する取決めです。
契約期間が適当か、延長の規定(自動更新等)の有無とその妥当性といった点をチェックします。


契約解除は、相手方が契約内容を履行できない場合や与信に関する不安状況(営業停止処分、差押え、破産などの発生)が発生した場合に、他方当事者が契約をの効力を消滅させることできるというものです。
販売者にとっては簡単に契約が解除され得る状況は好ましくありませんので、特に契約で定めた義務を履行できない状況が発生した場合の解除条件が厳しすぎないかを確認しましょう
(契約解除は契約期間そのもの取り決めではありませんが、契約期間に影響するためCに分類しています。)

D:取引に関する補足の取決め

Dは、取引そのものには関連しない補足的な取り決めです。秘密保持、譲渡禁止、紛争解決手段、裁判管轄などの取決めです。
契約の種類や取引の内容によらないため、一般条項と呼ばれます。

条件によって当事者のどちらか一方が著しく有利・不利になることは少ないです。例えば、東京と大阪の会社が結ぶ契約において裁判管轄が大阪(地裁)になった場合、東京の会社は大阪で裁判所に出向かなければなりません。この点で負担は増えますが、大阪の裁判所が大阪の会社に有利な判断をするわけではありません。また、最近では審理のオンライン化も進んでいます。
Dについては、これまで締結した契約なども参考にして、問題ないかをチェックしましょう。

契約書チェックの際に重点を置くべき箇所は?

契約書にはどこにリスクが潜んでいるかわかりませんので、全ての内容について慎重にチェックを行うのが原則です。
とはいえ、限られた時間の中で効率的に契約書チェックを行うには、契約書の構成を把握してどこに力点を置くかを決めておくと効率よく作業が行えます。一般的には、AとBの重要度が高いと思いますので、ここに重点を置いてチェックするとよいでしょう。
Aについては必ずしも法的知識がなくてもチェック可能ですが、Bについては法的な知識が必要になりますので、専門家の意見も取り入れてチェックすることをお勧めします。