契約書様式のチェックポイント⑤ ― 適切なハンコが使われていますか ―
印鑑の種類には次のようなものがあります。
A:実印
印鑑登録がなされている印鑑です。
個人であれば役所に、会社の代表者であれば法務局に登録でき、印鑑証明書によってその人の印鑑であることを証明できます。
B:認印
実印以外の印鑑を指します。
法人の場合は対外的に個人名の印鑑を使用することはほとんどなく、次のような印鑑を用います(用途による分類で正式な名称ではありません)。
・役職印 社長、専務、執行役員、部長など、役員や管理職の肩書を持つ人の印鑑。「〇〇株式会社××部長の印」などと彫刻されており、対外的には決裁権を持つ役職者の契約印として使用される。
・角印 会社の名称の印鑑。「〇〇株式会社の印」などと彫刻されており、請求書・領収書などに使用されることが多い。
・銀行印 金融機関の手続に用いる印鑑。金融機関に登録することもあるが、公的な証明力があるわけではない。
ポイント1:契約書には実印・認印どちらも使えます
契約書における法的効力は印鑑の種類、すなわち実印か認印かで変わりません。どちらの印鑑を用いてもよいのですが、認印の場合は使用された印鑑が本人のものであるという証明ができません。
実印は、個人であれば役所で、会社の代表者であれば法務局で登録でき、印鑑証明書によってその人の印鑑であることを証明できます。契約書に記載された本人が押印したことを確実にするために実印を用いるのが好ましいといえます。
ただ、現実には契約書すべてに実印を使用することは難しいと思います。そこで、初めて取引をする相手との契約書や重要な契約書の場合などには実印を用い、それ以外の日常的な取引における契約書の場合は認印を用いるなど、状況により印鑑を使い分けるのが現実的な対応でしょう。
ポイント2:契約書には使用出来ない印鑑もあります
認印には様々な種類が存在しますが、以下の印鑑は使用を避けた方がよいと思います。
個人の場合:シャチハタのようなスタンプ印は対外的な文書である契約書には使用しない方がよいでしょう。
法人の場合:法人であっても契約書の締結をするのは代表者やそれに代わる人(自然人)ですので、個人を特定する印鑑を用いる必要があります。
一般的に法人の場合は担当者ではなく管理職以上の役職者が締結権限を有すると考えられますのでその人の役職印を使用するのが一般的です。役職印がない場合は個人印の使用もやむを得ないと思いますが、会社印(角印)、銀行印、ゴム印などは個人を特定できませんので契約書には使用しない方がよいでしょう。
なお、法人の場合、代表者印や役職印に加え、角印を押印する場合があります。この場合、重要なのはその法人における契約締結権限を有する個人印が重要で、角印は形式的なものだと考えてください。
ポイント3:印鑑の代わりに署名でもOK
日本では契約書に印鑑を使用することが多いですが(記名押印)、印鑑に代えて署名(サイン)を使用することもできます。個人印の場合は簡単に同名の印鑑を入手出来てしまうので、印鑑に代えて又は印鑑とともに署名を使用するという方法も有効です。署名も本人が相手の目前でしたのでなければ本人の署名かどうかはわかりませんが、一定の不正抑止力にはなります。記名押印と署名については、こちらもご覧ください。