英文契約書の訂正・修正方法 ―削除・加入方法や修正契約書などについて解説します―

契約書の締結後に、誤りが見つかった場合や、内容を変更する必要が生じた場合はどうすればよいでしょうか※。
英文契約書を訂正する方法には、以下の3つがあります。
① 削除・加入により契約書を直接修正する。
② 修正契約書を締結する。
③ 契約書を再締結する。
この中で、単語レベルの軽微な修正には、削除・加入により契約書を直接修正する方法が適しています。また、条文の追加・削除や内容の変更が必要な場合には、修正契約書を用いて修正する方法が適しています。本稿では、これらの修正方法について説明します。
※これらの対応を表す用語として「訂正」「修正」「変更」などがありますが、本稿では「修正」を用いて説明します。なお、日本語の契約書の修正については、こちらの記事を参考にしてください。
契約書の訂正・修正方法 ―訂正印や修正契約書などについて解説します―
1.削除・加入による修正
(1)修正方法
スペルミスや単語の置き換えなどの軽微な修正には、契約書に直接修正を加える方法を用います。
- 修正箇所を二重線で消す。
- 加入する位置を「^」などで示し、修正箇所の上または下に正しい文字を記載する。
- 修正箇所または行端に契約書の署名者全員がイニシャルを記入する。
以下に例を示します(署名者のイニシャルをHSとTYとしています)。
① 削除と加入

② 削除のみ

③ 加入のみ

(2)注意点
修正の際は、契約書の署名者全員がイニシャルを修正箇所に施します。また、削除する箇所は線で消し、元の内容がわかるようにしておきます。
2.修正契約書による修正
(1)修正方法
条文の追加・削除や内容修正など、単語単位の変更では対応しにくい場合は、修正契約書で修正します。以下にサンプル契約書を示します。


(2)注意点
① 修正対象の契約を正確に特定しましょう
当事者、タイトル、契約日などで修正対象の契約書(原契約)を正確に特定し、間違いが生じないようにします。英文契約の場合は、WHEREAS条項で特定することが一般的です。以下は、サンプル契約書のWHEREAS条項です。
WHEREAS, A and B entered into the XXX Agreement dated as of January 20, 2025 ("XXX Agreement");
AとBは、20XX年月 XX日に、XXX契約 ("XXX契約") を締結しており、
② 修正が有効になる日に注意しましょう
修正契約書を用いる場合、その締結日が変更の有効日になるので注意が必要です。修正契約書の締結日と異なる日付から修正を有効にしたい場合は、その旨を明記しておくようにしましょう。以下は、サンプル契約書の例(第4条)です。
This Amendment becomes effective on and after 月 日, 20XX.
本修正契約は20XX年 月 日に発効する。
③ 複数回の修正を行った場合は作成順序を明確にしましょう
契約書の修正は一度だけでなく、複数回行われることがあります。同じ契約書に対して複数回の修正が行われると、最新の修正がどれであるか判別が難しくなります。そのため、例えば Second Amendment Agreementや Amendment Number Three To XXXX Agreement など、何回目の修正かがわかるタイトルを付けて、作成の順序を明確にするとよいでしょう。
3.その他
(1)契約書の再締結
契約書の修正方法には、上記の方法に加え、契約書自体を破棄し、修正を加えた新たな契約内容で再締結する方法もあります。この場合は、原契約を終了させて新たな契約書を締結するか、新たに締結する契約書の中に原契約の効力を失わせ文言を加えておくようにします。
(2)電子契約の訂正・修正
電子契約は非改ざん性があるため、締結済み契約書データに対する追加、変更、削除はできません。誤字脱字等の軽微な修正の場合でも、原契約とは別に修正契約書を作成するか、契約書を改めて作成して再締結する必要があります。
電子契約に関しては、こちらの記事も参考にしてください。
電子契約① ― 電子契約とは ―
電子契約② ― 導入の際に検討すべき事項 ―
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